株式会社HUMEDIT

医療広告ガイドラインとは?2026年改正の禁止6類型と限定解除4要件

医療広告ガイドラインとは、医療機関の広告に対して医療法が定めるルールを、厚生労働省が具体的に解釈・整理した指針です。 正式名称は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」といいます。2018年6月1日の改正医療法施行により、それまで規制の外にあった自院のウェブサイトも広告規制の対象になりました。

そして2026年3月30日、厚生労働省はガイドライン本体・Q&A・「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」の3文書を同時に改正しています。

私たち株式会社HUMEDITは、グループで11院・多科目のクリニック運営に関わってきました。その現場で何度も見てきたのが、「悪意はまったくないのに、ページを公開した瞬間に違反状態になっている」というケースです。院長が自分で書いた症例紹介、スタッフが善意で載せた患者さんの声、制作会社が提案してきたキャッチコピー。どれも患者さんのためを思って作られたものでした。

この記事では、医療広告ガイドラインの全体像を、条文の引用ではなく実際に自院サイトのどこを直せばよいかという視点で整理します。

⚠️ 本記事は2026年7月時点の公開情報にもとづく解説です。最終的な判断は必ず厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」の原文および所管の保健所にご確認ください。

この記事でわかること

  • 医療広告ガイドラインの正式名称・法的根拠・対象範囲
  • 2026年3月30日改正で実務上どこが変わったのか
  • 「広告」に該当するかどうかを分ける2つの要件
  • 禁止される6類型と、実際にNGになる表現の具体例
  • 広告可能事項の限定解除4要件と、自由診療で追加される2要件
  • ビフォーアフター写真・患者の体験談・SNS投稿それぞれの扱い
  • 違反した場合の行政指導の流れと罰則
  • 自院サイトを今日チェックできるセルフチェックリスト38項目

医療広告ガイドラインとは何か

医療広告ガイドラインは、医療法第6条の5〜第6条の8が定める広告規制について、厚生労働省が「具体的に何がセーフで何がアウトか」を示した行政指針です。

法律の条文だけでは、「誇大な広告をしてはならない」と書かれていても、実際に「最先端の治療」と書いてよいのかどうかは判断できません。その判断基準を埋めるのがガイドラインの役割です。

正式名称と位置づけ

項目 内容
正式名称 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針
通称 医療広告ガイドライン
発出元 厚生労働省医政局
法的根拠 医療法第6条の5、第6条の6、第6条の7、第6条の8
ウェブサイト規制の開始 2018年6月1日(改正医療法の施行)
直近の改正 2026年3月30日(本体・Q&A・事例解説書 第6版を同時改正)
関連文書 医療広告ガイドラインに関するQ&A/医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)

ガイドライン自体は法律ではありません。しかし違反が認められれば、医療法にもとづく行政指導・中止命令の根拠になります。「ガイドラインだから努力目標だろう」という理解は、実務上まったく通用しないと考えてください。

なぜウェブサイトが規制対象になったのか

2017年、美容医療サービスをめぐる消費者トラブルが社会問題になりました。国民生活センターへの相談件数が増加し、特に自由診療の広告表現が問題視されます。

こうした経緯を受けて医療法が改正され、2018年6月1日から医療機関のウェブサイトも「広告」として規制対象に含まれました。それまでウェブサイトは「患者が自ら求めて閲覧するもの」として広告に当たらないと整理されていました。この前提が変わったことが、現在の実務の出発点です。

対象になるのは誰か

規制の対象は医療機関だけではありません。ここを誤解している事業者が非常に多い部分です。

  • 病院・診療所・歯科診療所(開設者・管理者)
  • 助産所
  • 医療機関から依頼を受けた広告代理店・ホームページ制作会社
  • 医療機関の広告を掲載するポータルサイト運営者
  • 医療機関の依頼で発信するインフルエンサー・アフィリエイター

「制作会社が勝手に書いた」という主張は通りません。責任は最終的に医療機関側にも及びます。私たちが制作を受託する際、必ず院長先生と一緒に文言を確認する工程を入れているのは、この構造があるためです。


2026年3月30日改正で何が変わったのか

2026年改正の実務上の要点は、SNS・動画における限定解除要件の「書く場所」が明確化されたこと、そして自由診療における用法・用量の記載要件が整理されたことの2点です。

条文が根本から書き換わったわけではありません。しかし現場の判断が揺れていた領域に、具体的な線が引かれました。

改正された3文書

文書名 版・日付 実務インパクト
医療広告ガイドライン本体 2026年3月30日改正 全体の解釈の土台
医療広告ガイドラインに関するQ&A 2026年3月30日改正 個別判断の拠り所。まずここを読む
医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第6版・2026年3月30日 NG/OK例が図版付き。制作現場で最も使う

実務で一番使うのは3つ目の事例解説書です。文章での説明ではなく、実際のウェブサイト画面のスクリーンショットに「この表現がNG」と注記が入っています。制作会社との打ち合わせには、この第6版をプリントアウトして持ち込んでください。

SNS・動画での限定解除要件の記載場所

これまで曖昧だったのが、Instagram や YouTube で情報発信するときに、限定解除の要件(後述)をどこに書けばよいのかという点でした。2026年改正では、以下のように整理されています。

媒体 限定解除要件の記載場所
SNS投稿 プロフィール・投稿本文・返信のいずれか、分かりやすい場所
動画 動画内・タイトル・概要欄のいずれか、分かりやすい場所
ビフォーアフター写真の付記事項 画像の付近(他の場所では不可。要件が厳しい)

注意すべきは3行目です。ビフォーアフター写真については、「概要欄に書いてあるからよい」という扱いになりません。画像のすぐ近くに、治療内容・費用・リスクを書く必要があります。

依然として限定解除できない媒体

一方で、限定解除がそもそも使えない媒体もあります。ここは改正前後で変わっていません。

  • 折込チラシ・ダイレクトメール
  • 新聞広告・雑誌広告
  • テレビCM・ラジオCM
  • 看板・電柱広告
  • バナー広告・リスティング広告そのもの

リスティング広告の扱いは誤解が多い部分です。広告文そのものは限定解除できません。ただし、その広告をクリックした先のランディングページが「患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト」と認められれば、遷移先のページでは限定解除が可能とされています。

つまり、広告文には広告可能事項の範囲でしか書けない。しかしLPでは詳細を説明できる。この二段構えを設計できるかどうかが、自由診療の集患効率を大きく左右します。


そもそも「広告」に該当するかを分ける2要件

ある表示が医療広告規制の対象になるかどうかは、「誘引性」と「特定性」の2つを両方満たすかで判断されます。

どちらか一方でも欠ければ、医療広告規制の対象外です。この判定を最初に行わないと、規制しなくてよいものまで過剰に自主規制してしまいます。

誘引性

患者の受診を誘引する意図があるかどうか、という要件です。

意図の有無は、発信者の主観ではなく客観的に判断されます。「宣伝のつもりはなかった」という説明は通りません。診療科目や住所、電話番号、予約フォームへの導線が併記されていれば、通常は誘引性があると見なされます。

特定性

医業を提供する者の氏名、または病院・診療所の名称が特定できるかどうか、という要件です。

医療機関名が書かれていなくても、写真や住所、ロゴなどから特定できれば特定性は認められます。「A院」といった伏せ字にしても、文脈から分かる場合は同じです。

判定の具体例

表示 誘引性 特定性 医療広告規制
自院サイトの診療案内ページ 対象
自院の症例紹介ブログ 対象
院長個人が学会発表内容をSNSに投稿(院名なし・受診導線なし) × × 対象外
医学論文・学術発表 × 対象外
院内に掲示した診療案内 × 対象外
患者が自発的に書いた第三者の口コミサイト投稿 × 対象外
医療機関が依頼して書かせた口コミ 対象

最終行が重要です。第三者の自発的な口コミは規制対象外ですが、医療機関が依頼・対価を払って書かせた場合は広告に該当します。口コミ獲得施策を外部業者に発注するときは、この線を必ず確認してください。


禁止される6類型と具体的なNG表現

医療広告ガイドラインで禁止される6類型を表すピクトグラム

医療法と医療広告ガイドラインは、内容が事実であっても掲載してはならない広告として6つの類型を定めています。

「嘘を書かなければよい」という理解では足りません。事実であっても禁止されるものがある、というのがこの規制の特徴です。

6類型の一覧

# 類型 概要
1 虚偽広告 事実に反する内容
2 比較優良広告 他院より優れていると示す内容
3 誇大広告 事実を不当に誇張した内容
4 公序良俗に反する広告 品位を欠く、または不安を過度に煽る内容
5 患者等の主観に基づく体験談 治療内容・効果に関する感想
6 誤認のおそれがある術前術後写真 説明のないビフォーアフター

このほか、①〜⑥に該当しなくても、広告可能事項以外の内容は原則として広告できません(限定解除が適用される場合を除く)。

1. 虚偽広告

事実に反する内容です。罰則の適用対象になり得る、最も重い類型と考えてください。

NG表現 理由
「絶対に安全な手術です」 医療に絶対はない
「100%治ります」 効果を保証できない
「一日で全ての治療が終了します」 通常はあり得ない内容
「厚生労働省承認の○○療法」(実際には未承認) 事実に反する
加工・修正した術前術後写真 実際の結果と異なる

「絶対」「100%」「必ず」といった断定語は、原則として使えないと考えてください。

2. 比較優良広告

他の医療機関と比較して優れていると示す内容です。事実であっても禁止されます。ここが誤解されやすい点です。

NG表現 補足
「日本一の症例数」 事実でも不可
「県内No.1の実績」 客観的データがあっても不可
「最高の医療を提供します」 主観的優良性の表示
「当院は他院より安全です」 比較そのものが不可
「芸能人も多数来院」 優良性の暗示

一方で、客観的な事実として検証可能な情報は、比較を伴わない形であれば掲載できる場合があります。「2025年の年間手術件数:320件」といった数値の記載は、事実であり比較表現を伴わないため、通常は問題になりません。

3. 誇大広告

事実を不当に誇張したり、誤認させたりする内容です。実務で最も引っかかりやすい類型です。

NG表現 理由
「最先端の治療」 根拠が示せない誇張
「痛みのない治療」 個人差を無視した断定
「知事の許可を取得した病院!」 当然のことを特別であるかのように表示
「専門医が対応」(認定団体の記載なし) 誤認のおそれ
有利な口コミだけを選別して掲載 実態と異なる印象を与える

最終行に注意してください。口コミの掲載自体を工夫しても、良いものだけを選んで並べれば誇大広告と判断されます。

4. 公序良俗に反する広告

わいせつ・残虐な図画、差別を助長する表現などが該当します。加えて、費用の過度な強調や、不安を煽る表現もこの類型で問題になります。

  • 「今だけ半額!」「先着10名様限定」といった過度な期間限定表示
  • 「放置すると手遅れになります」といった恐怖訴求
  • 「無料相談」を大きく打ち出し、実際には有料へ誘導する構成

5. 患者等の主観に基づく体験談

治療内容や効果に関する患者の体験談は、限定解除の要件を満たしても掲載できません。 これは6類型の中で唯一、限定解除による救済がない項目です。

治療効果には個人差があり、体験談を読んだ患者が自分にも同じ結果が起きると誤認するおそれがあるためです。

掲載可否 内容例
✕ 不可 「シミがきれいに消えました」
✕ 不可 「痛みがまったくありませんでした」
✕ 不可 「先生の腕が良く、大満足の仕上がりです」
○ 可 「駅から近く通いやすかったです」
○ 可 「待合室が清潔で快適でした」
○ 可 「スタッフの受付対応が丁寧でした」

治療と無関係な、施設や接遇に関する感想であれば掲載できます。ただし前述のとおり、好意的なものだけを選別すれば誇大広告に転じます。

6. 誤認のおそれがある術前術後写真

いわゆるビフォーアフター写真です。掲載が一律禁止というわけではありません。条件を満たせば掲載できます。詳しくは後述します。


広告可能事項──限定解除なしで書けること

限定解除を使わない場合でも、医療法と告示が定める「広告可能事項」であれば自由に掲載できます。

まず自院のサイトが、この範囲だけで足りるのか、限定解除が必要なのかを切り分けてください。保険診療中心のクリニックであれば、広告可能事項だけで十分に情報提供できるケースも少なくありません。

主な広告可能事項

カテゴリ 具体例
医師・歯科医師である旨 医師・歯科医師の氏名
診療科名 内科、外科、皮膚科、形成外科など(告示で定められた名称)
名称・電話番号・所在地 医療機関名、住所、連絡先
診療日・診療時間・予約の有無 受付時間、休診日、予約制かどうか
法令に基づく届出・指定 保険医療機関である旨、施設基準の届出状況
専門性資格 厚生労働大臣に届出のあった団体の専門医資格
施設・設備・従業者 病床数、医療機器、医師数・看護師数
提供される医療の内容 保険診療として行われる検査・手術・治療
費用 保険診療の一部負担金、自由診療の費用
手術件数・分娩件数 実施件数・平均入院日数などの実績

注意点は「提供される医療の内容」の行です。保険適用の治療は広告可能事項に含まれますが、自由診療の治療内容は原則として広告可能事項の外側にあります。だからこそ美容医療や自由診療のクリニックは、限定解除の要件を満たす必要が出てきます。

専門性資格の書き方

「専門医」と名乗れるのは、厚生労働大臣に届出のあった団体が認定した資格に限られます。届出のない学会の認定資格を「○○専門医」と表示すると、虚偽または誇大広告に該当し得ます。

正しい表記は「日本○○学会認定 ○○専門医」のように、認定団体名とセットで記載する形です。団体名を省いた「専門医」単独の表記は避けてください。


限定解除の4要件

医療広告の限定解除4要件を4本の柱と解錠された鍵で表した図

広告可能事項に含まれない情報でも、4つの要件をすべて満たせばウェブサイト等に掲載できます。これを「広告可能事項の限定解除」と呼びます。

根拠は医療法施行規則第1条の9の2です。自由診療を提供するクリニックにとって、実務上ここが最大の分かれ目になります。

4要件の内容

# 要件 適用範囲
1 医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること すべて
2 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること すべて
3 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること 自由診療のみ
4 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること 自由診療のみ

要件1と2はすべてのケースで必要です。要件3と4は自由診療の情報を掲載する場合に追加されます。

要件1:媒体の性質

自院のウェブサイト、SNSの投稿、動画は、原則としてこの要件を満たします。患者が検索やリンクをたどって能動的に到達するためです。

反対に、折込チラシやテレビCM、看板は「自ら求めて入手する」ものではありません。したがって限定解除は使えません。

要件2:問い合わせ先の明示

電話番号、問い合わせフォームへのリンク、メールアドレスのいずれかを、患者が見つけやすい場所に置いてください。フッターに小さく書くだけでは不十分と判断される可能性があります。

実務上は、該当ページ内に明示するのが安全です。トップページにしか連絡先がない構成は避けてください。

要件3:治療内容と費用

自由診療について、次の項目を具体的に記載します。

記載項目 書き方の例
治療の内容 使用する薬剤・機器、施術の手順
標準的な費用 「1回 33,000円(税込)」のように総額表示
治療期間・回数 「3〜5回、約3か月」
用法・用量 内服薬・外用薬を伴う場合はその使用方法

「〇〇円〜」という下限のみの表示は、総額が不明確なため避けてください。幅がある場合は「33,000円〜55,000円(税込)」のように上限まで示します。

要件4:リスク・副作用

治療に伴う主なリスクと副作用を記載します。ここを省略しているサイトが非常に多いのが実情です。

  • 起こり得る合併症・副作用
  • ダウンタイムの目安
  • 効果に個人差がある旨
  • 未承認医薬品・医療機器を用いる場合はその旨と入手経路、国内承認医薬品等の有無、諸外国における安全性等に係る情報

最後の項目は特に見落とされがちです。未承認の医薬品や医療機器を用いる自由診療を提供している場合、上記4点の明示が別途求められます。個人輸入した医薬品・医療機器を使う施術では必須と考えてください。


ビフォーアフター写真を掲載する3つの条件

術前術後写真の掲載条件を示すカメラと写真枠とチェックリストの図

術前術後の写真は、限定解除の4要件を満たしたうえで、加工をせず、症例ごとに詳細を付記すれば掲載できます。

「ビフォーアフターは全面禁止」と誤解している医療機関が少なくありません。実際には条件付きで可能です。

満たすべき3条件

# 条件 具体的な対応
1 限定解除4要件を満たす 問い合わせ先・費用・リスクを明示
2 写真を加工・修正しない 明るさ調整・レタッチ・角度の変更で印象を変えない
3 症例ごとに詳細を付記 治療内容/期間・回数/標準的費用/リスク・副作用

条件3の付記事項は、症例ごとに必要です。ページ下部にまとめて注記する方式では足りません。そして2026年改正で明確化されたとおり、付記は画像の付近に置く必要があります。

実装時のレイアウト例

┌─────────────────────────┐
│  [施術前]      [施術後]  │
├─────────────────────────┤
│ 施術名:ダイオードレーザー脱毛  │
│ 治療内容:両ワキへの照射       │
│ 回数・期間:5回/約8か月       │
│ 費用:総額 44,000円(税込)    │
│ リスク・副作用:赤み、毛嚢炎、  │
│   色素沈着、やけどの可能性     │
│ ※効果には個人差があります      │
└─────────────────────────┘

このブロックを1症例ごとに繰り返す構成が、最も安全で分かりやすい形です。私たちがクリニックのサイトを設計するときは、症例投稿のカスタム投稿タイプにこれらの項目を必須フィールドとして持たせています。入力しなければ公開できない仕組みにしてしまえば、記載漏れは構造的になくなります。

よくある不備

  • 費用を「カウンセリング時にご案内」とだけ書いている
  • リスクを「まれに赤みが出ることがあります」の一文で済ませている
  • 同意を得ずに患者の写真を掲載している(個人情報保護の観点でも問題)
  • 照明や角度を変えて撮影し、効果を強調している

3つ目の同意については、医療広告ガイドラインとは別に個人情報保護法の問題が発生します。書面での同意取得を運用に組み込んでください。


患者の口コミ・体験談をどう扱うか

治療内容や効果に関する患者の体験談は、自院サイトへの掲載が禁止されています。一方、Googleマップ等に患者が自発的に投稿した口コミは、医療広告規制の対象外です。

この2つを混同すると、集患施策の設計を誤ります。

掲載可否の整理

ケース 医療広告規制 可否
自院サイトに治療効果の体験談を掲載 対象 不可
自院サイトに接遇・設備の感想を掲載 対象 可(選別すれば誇大広告)
患者が自発的にGoogleマップへ投稿 対象外 医療機関の責任は問われない
医療機関が依頼して口コミを書かせる 対象 不可
謝礼・割引と引き換えに口コミを依頼 対象 不可(景品表示法上も問題)
自院サイトにGoogle口コミを転載 対象 不可(体験談の掲載に当たる)

最終行は見落とされやすい部分です。Googleマップ上の口コミは規制対象外ですが、それを自院サイトに転載した瞬間に、医療機関による体験談の掲載になります。

口コミへの返信は問題ないか

返信そのものは可能です。ただし返信文の中で治療効果に言及すれば、体験談と同じ問題が生じます。

返信例 判定
「ご来院ありがとうございました。またお待ちしております。」 問題なし
「きれいに治って良かったです!」 治療効果への言及。避けるべき
「当院の最新機器の効果が出ましたね」 誇大広告のおそれ

AIによる口コミ自動返信ツールを導入する医療機関が増えています。導入する場合は、治療効果に言及しないテンプレートに固定してください。生成AIに自由に文章を作らせると、善意の返信が違反表現になります。


SNS・YouTube・Instagramの扱い

医療機関のSNS投稿や動画も医療広告に該当します。ただし限定解除が使える媒体であるため、要件を満たせば自由診療の情報も発信できます。

「SNSは私的な発信だから規制外」という理解は誤りです。誘引性と特定性を満たせば広告です。

媒体別の要件記載場所

媒体 記載場所
Instagram プロフィール欄/キャプション/コメント欄のいずれか
X(旧Twitter) プロフィール欄/ポスト本文/リプライのいずれか
YouTube 動画内/タイトル/概要欄のいずれか
TikTok プロフィール/キャプションのいずれか
ビフォーアフター画像 画像の付近(上記の場所では不可)

インフルエンサー・PR案件の注意

医療機関が費用を負担してインフルエンサーに発信を依頼した場合、その投稿は医療機関の広告です。インフルエンサー本人の体験談として治療効果を語らせれば、体験談広告の禁止に抵触します。

加えて、広告であることを明示しなければステルスマーケティングとして景品表示法上も問題になります。2023年10月からステマ規制が施行されている点も踏まえてください。

私たちが自由診療クリニックのSNS運用を設計するときは、投稿テンプレートを3種類に分けています。①症例紹介(限定解除フル要件つき)、②院内・スタッフ紹介(規制の負荷が軽い)、③疾患の一般解説(誘引性を持たせない)。この分類を先に決めておくと、担当スタッフが毎回悩まずに投稿できます。


違反した場合はどうなるか

行政指導から罰則まで段階的に上がる措置の流れを表した階段の図

医療広告ガイドライン違反が確認されると、行政指導から始まり、改善されない場合は中止命令・是正命令、最終的には罰則の適用に至ります。

いきなり罰則が科されるわけではありません。ただし指導を放置すれば段階が上がります。

措置の流れ

段階 内容 主体
1 ネットパトロール等による通知 委託事業者
2 行政指導(改善依頼) 都道府県・保健所
3 報告命令・立入検査 都道府県知事
4 中止命令・是正命令 都道府県知事
5 罰則の適用 司法

厚生労働省は「医療広告ガイドラインに基づく標準的な対応期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型」(2024年8月23日)を示しており、自治体側の対応も標準化が進んでいます。

罰則の内容

医療法にもとづき、以下の罰則が定められています。

  • 中止命令・是正命令に違反した場合:6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
  • 虚偽広告を行った場合:6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
  • 報告命令に応じない、または虚偽の報告をした場合:20万円以下の罰金

金額の大小より、行政処分歴が残ることの影響を重く見るべきです。医療機関の信用に直結します。

医療広告ネットパトロール

厚生労働省は、医療機関のウェブサイトを監視する「医療広告ネットパトロール」事業を委託実施しています。

監視のきっかけは主に3つです。

  • 一般市民・患者からの通報
  • 同業他院からの通報
  • 委託事業者によるキーワード検索での網羅的な巡回

3つ目に注意してください。特定の検索キーワードで機械的に巡回されます。「シミ 完全に消える」のような表現を使っていれば、通報がなくても発見されます。


自院サイトのセルフチェックリスト

まずは自院サイトを開き、以下の項目を上から順に確認してください。1項目でも該当すれば、その箇所は修正が必要です。

制作会社に依頼する前に、院内でここまで洗い出しておくと、修正の見積もりが格段に正確になります。

表現のチェック(14項目)

☐ 「絶対」「必ず」「100%」を使っていないか ☐ 「日本一」「No.1」「最高」を使っていないか ☐ 「最先端」「最新」に客観的根拠があるか ☐ 「痛みのない」「安全な」と断定していないか ☐ 他院との比較表現がないか ☐ 「〇〇専門医」に認定団体名が併記されているか ☐ 届出のない学会の資格を専門医と表示していないか ☐ 「無料」「割引」「キャンペーン」を過度に強調していないか ☐ 「今だけ」「先着」など期間限定を煽っていないか ☐ 「放置すると危険」など不安を煽る表現がないか ☐ 芸能人・著名人の来院を示唆していないか ☐ 死亡率・術後生存率等の治療結果を誤認させる形で載せていないか ☐ 加工した画像を使っていないか ☐ 診療科名が告示で認められた名称になっているか

自由診療ページのチェック(12項目)

☐ 治療内容が具体的に書かれているか ☐ 標準的な費用が総額で書かれているか ☐ 「〇〇円〜」の下限表示だけになっていないか ☐ 治療期間・回数が書かれているか ☐ 主なリスク・副作用が書かれているか ☐ 効果に個人差がある旨を明記しているか ☐ 未承認医薬品・医療機器を使う場合、その旨を明示しているか ☐ 未承認品の入手経路を明示しているか ☐ 国内承認医薬品等の有無を明示しているか ☐ 諸外国における安全性等の情報を明示しているか ☐ 用法・用量を記載しているか(薬剤を伴う場合) ☐ 問い合わせ先が当該ページ内に明示されているか

症例写真のチェック(6項目)

☐ 写真を加工・修正していないか ☐ 撮影条件(照明・角度)を揃えているか ☐ 症例ごとに治療内容を付記しているか ☐ 症例ごとに費用を付記しているか ☐ 症例ごとにリスク・副作用を付記しているか ☐ 付記事項が画像の付近に配置されているか

口コミ・体験談のチェック(6項目)

☐ 治療効果に関する体験談を掲載していないか ☐ Google口コミを自院サイトに転載していないか ☐ 好意的な感想だけを選別していないか ☐ 謝礼と引き換えに口コミを依頼していないか ☐ 口コミ返信で治療効果に言及していないか ☐ AI自動返信が効果に言及しない設定になっているか

合計38項目です。すべてクリアしていれば、少なくとも典型的な指摘は回避できます。


ガイドラインを守りながら集患する方法

規制を守ることと集患を伸ばすことは矛盾しません。むしろ限定解除の要件を丁寧に満たしたページのほうが、検索評価と予約転換率の両方で有利になります。

これは私たちがグループの11院で実際に経験したことです。

なぜ規制対応がSEOに効くのか

限定解除の要件を満たすと、ページには次の情報が揃います。

追加される情報 検索・CVへの効果
治療内容の具体的な説明 検索意図への網羅性が上がる
総額での費用表示 「〇〇 費用」「〇〇 料金」で上位化しやすい
治療期間・回数 「〇〇 何回」「〇〇 期間」のクエリに対応
リスク・副作用 「〇〇 デメリット」「〇〇 副作用」で流入
問い合わせ先の明示 予約導線が増え、CVRが上がる

つまり限定解除の4要件は、そのまま検索ユーザーが知りたい情報のリストになっています。規制対応を「削る作業」だと考えるから苦しくなります。実際には情報を足す作業です。

AI検索・AI Overviewへの対応

2025年以降、Google の AI Overview や生成AIによる回答が検索結果の上部を占めるようになりました。ここで引用されるのは、定義が明快で、数値と条件が構造化されているページです。

医療広告ガイドラインへの対応は、この構造化と方向が一致します。費用・期間・リスクを表形式で明示したページは、AIが要約しやすく、引用されやすくなります。規制対応を済ませたクリニックほど、AI検索の時代に有利になるという逆転が起きています。

禁止表現を使わずに強みを伝える言い換え

使えない表現 言い換え例
日本一の症例数 2025年の年間実施件数:320件
最先端の医療機器 2024年導入の〇〇(機器の一般名称)
痛みのない治療 麻酔クリームを使用し、痛みの軽減に努めています
絶対に安全 〇〇学会のガイドラインに沿った手順で実施しています
患者様の満足の声 実施件数・通院継続率などの客観的数値
他院より安い 総額 33,000円(税込)※追加費用なし

右列はいずれも、検証可能な事実に置き換えたものです。事実で語るほうが、結果として患者の信頼を得られます。


診療科・診療形態別の注意点

同じ医療広告ガイドラインでも、実際に指摘を受けやすい箇所は診療科によって大きく異なります。

自院がどの類型に近いかを把握して、重点的に確認する箇所を絞ってください。

美容医療(美容外科・美容皮膚科)

最も指摘を受けやすい領域です。自由診療が中心のため、限定解除の4要件が全ページで必要になります。

頻出する指摘 対応
ビフォーアフター写真の付記漏れ 症例ごとに治療内容・回数・費用・リスクを画像付近へ
「〇〇円〜」の下限表示 総額または上下限で表示
モニター価格の通常価格併記なし 適用条件と通常価格を明示
患者の満足の声を掲載 治療効果に触れる体験談は全面削除
「切らない」「ダウンタイムなし」 個人差と実際の経過を併記
未承認医薬品・機器の記載不足 未承認である旨・入手経路・国内承認の有無・諸外国の安全性情報

未承認医療機器を使った施術は特に注意が必要です。海外から輸入したレーザー機器やHIFU機器を用いる場合、4点の明示が漏れているサイトが目立ちます。未承認品の広告が禁じられる理由は、薬機法の基本と広告規制で説明しています。

歯科

保険診療と自由診療が混在するため、ページ単位で扱いを切り替える必要があります。

頻出する指摘 対応
インプラント費用の総額が不明 手術・上部構造・診断料を含む総額を表示
矯正の期間表示が「最短〇か月」のみ 標準的な期間を併記
「痛くない治療」の断定 麻酔法など具体的な手段の説明に置換
「削らない虫歯治療」の断定 適応条件を明示
認定医・専門医の団体名なし 認定団体名を併記
ホワイトニングの効果保証 個人差の明記

保険診療の説明ページは広告可能事項の範囲に収まることが多く、限定解除まで不要なケースもあります。ページごとに必要な要件を切り分けると、修正の工数を抑えられます。

AGA・ED・医療ダイエット等の自由診療内科

オンライン診療との組み合わせが多く、薬機法との重なりが強い領域です。

頻出する指摘 対応
「必ず生える」「〇か月で効果」 効果保証は不可。個人差を明記
内服薬の用法・用量の記載なし 2026年改正で整理された項目。必ず記載
未承認薬(海外製ジェネリック等)の説明不足 4点の明示が必須
副作用の記載が一行のみ 主な副作用を具体的に列挙
「初回無料」の強調 継続時の費用と条件を同等の視認性で表示

再生医療・自由診療のがん治療

社会的な影響が大きく、監視の目が厳しい領域です。

  • 「がんが消える」「免疫力で治す」といった効果の断定は虚偽広告に直結します
  • 再生医療等安全性確保法にもとづく計画提出番号の表示が求められる場合があります
  • 未承認治療については、標準治療との関係を誤認させない記述が必要です

動物病院はどうなるか

医療法の対象は人の医療です。動物病院は医療広告ガイドラインの対象外になります。ただし獣医療広告規制(獣医療法)が別に存在し、景品表示法も適用されます。「対象外だから自由」ではない点にご注意ください。


医療広告ガイドラインと他の法令の関係

医療機関の広告は、医療法だけでなく薬機法・景品表示法・健康増進法・個人情報保護法にも同時に縛られます。

医療広告ガイドラインをクリアしても、別の法令で問題になるケースがあります。

法令 主に問題になる場面 典型的な違反
医療法(医療広告ガイドライン) 医療機関の広告全般 比較優良・誇大・体験談
医薬品医療機器等法(薬機法) 医薬品・医療機器の効能効果の表示 未承認品の効能を標榜する
景品表示法 価格・品質の表示、ステマ 二重価格表示、広告の非明示
健康増進法 健康保持増進効果の表示 根拠のない痩身効果の訴求
個人情報保護法 症例写真・患者情報の掲載 同意なしの掲載
著作権法 画像・文章の転載 他院サイトからの流用

薬機法との重なり

自由診療で医薬品や医療機器を扱う場合、薬機法の規制が重なります。未承認の医薬品・医療機器について、承認された効能効果があるかのように表示すれば薬機法違反です。

医療機関が自らの診療の一環として説明する範囲であれば直ちに違反とはなりませんが、線引きは微妙です。医薬品名を前面に出した訴求は避けてください。

景品表示法のステマ規制

2023年10月から、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)が景品表示法の不当表示に指定されています。

インフルエンサーへの依頼、アフィリエイト、口コミ投稿の依頼はすべてこの対象です。「PR」「広告」「提供」といった表示を、消費者が認識できる形で入れてください。

二重価格表示

「通常100,000円のところ、今なら50,000円」という表示には、通常価格の実態が必要です。実際にはその価格で販売した実績がない場合、有利誤認表示になります。

モニター価格を打ち出す自由診療クリニックは多いですが、通常価格の設定根拠を説明できるようにしておいてください。


制作会社・広告代理店に依頼するときの確認事項

責任は医療機関側に残ります。発注前に、相手が医療広告規制をどこまで理解しているかを確認してください。

私たちが引き継ぎで既存サイトを拝見すると、制作会社が汎用のテンプレート文言をそのまま使っており、開院時から違反状態が続いていた例に何度も遭遇しました。悪意ではなく、単に知識がなかったというケースがほとんどです。

発注前の質問リスト

  • 医療広告ガイドラインの最新版(2026年3月30日改正)を確認していますか
  • 事例解説書(第6版)を制作フローに組み込んでいますか
  • 限定解除の4要件を、どのページ要素で担保しますか
  • 症例投稿に付記事項の必須入力フィールドを用意できますか
  • 公開前のリーガルチェック工程はありますか
  • 医療機関の実績は何件ありますか(診療科も確認)
  • ネットパトロールから指摘を受けた場合の対応範囲は契約に含まれますか

最後の項目を契約書に明記しておくと、指摘を受けたときの対応がスムーズです。

契約書に入れておきたい条項

条項 内容
法令遵守 医療法・薬機法・景品表示法の遵守を明記
修正対応 行政指導を受けた場合の修正対応と費用負担
監修フロー 公開前の医療機関側承認を必須とする
著作権・肖像権 症例写真の使用範囲と同意取得の責任分担
更新体制 ガイドライン改正時の見直し実施

院内の運用体制をどう作るか

ガイドライン対応は一度きりの修正では終わりません。誰がいつ確認するかを決めて、運用に組み込んでください。

サイトを直しても、その後スタッフがブログやSNSを更新するたびに新しい違反が生まれます。仕組みで防ぐしかありません。

3層のチェック体制

担当 確認内容 タイミング
一次 投稿担当スタッフ 禁止表現リストとの照合 投稿作成時
二次 広報責任者 限定解除要件の充足、付記事項 公開前
三次 院長・管理者 医学的正確性、最終承認 公開前

小規模なクリニックであれば、二次と三次を院長が兼ねても構いません。重要なのは、投稿者本人以外の目が必ず入ることです。

禁止ワードリストを共有する

院内で使わない言葉のリストを作り、投稿ツールに登録しておいてください。WordPressであれば、公開前に禁止語を検出するプラグインや簡単なフックで実装できます。

私たちがクリニックのサイトを構築する際は、publish_post の前に禁止語を検出して警告を出す仕組みを入れています。人の注意力に頼らない設計にしておくと、スタッフが入れ替わっても品質が保たれます。

定期的な棚卸し

頻度 実施内容
毎月 新規公開ページ・SNS投稿の事後確認
四半期 症例写真ページの付記事項の網羅確認
半年 料金表示と実際の料金の突き合わせ
随時 厚生労働省のガイドライン改正の確認

料金の突き合わせは見落とされがちです。院内で価格改定をしたのに、サイトの表示が古いままだと、虚偽広告と指摘される可能性があります。


保健所への相談の仕方

判断に迷う表現は、公開前に所管の保健所へ確認するのが最も確実です。

保健所は取り締まる側であると同時に、相談先でもあります。事前に相談したという記録は、万一指摘を受けたときにも意味を持ちます。

相談の準備

  • 該当ページのURL、または公開前であれば画面のPDF
  • 迷っている表現を具体的に特定した一覧
  • 自院での判断と、その根拠(ガイドラインの該当箇所)

「このサイト、大丈夫でしょうか」という漠然とした聞き方では、有効な回答が得られません。論点を絞って持ち込むと、具体的な回答が返ってきます。

回答の扱い

保健所の回答は、担当者の見解として得られます。自治体によって判断が分かれる論点も存在します。回答は日付・担当者名とともに記録に残してください。


実際に指摘されやすい10のパターン

ネットパトロールや保健所の指導で繰り返し挙がるのは、特殊な事例ではなく、ごくありふれた表現です。

以下の10パターンは、私たちが医療機関のサイトを診断したときに高い頻度で見つかるものです。

# パターン よくある文言 修正の方向
1 効果の断定 「シミが消えます」 「シミの改善を目的とした施術です。効果には個人差があります」
2 安全性の断定 「安心・安全な施術」 「〇〇学会のガイドラインに沿って実施しています」
3 優位性の主張 「地域No.1の実績」 「2025年の年間実施件数:320件」
4 体験談の掲載 「痛みもなく大満足でした(30代女性)」 削除。または接遇・設備に関する感想へ差し替え
5 費用の下限表示 「1回 9,800円〜」 「1回 9,800円〜19,800円(税込)/追加費用なし」
6 付記のない症例写真 写真のみ掲載 画像付近に治療内容・回数・費用・リスクを記載
7 リスクの過小記載 「まれに赤みが出ます」 主な副作用を具体的に列挙
8 未承認品の説明不足 機器名のみ記載 未承認である旨・入手経路・国内承認の有無・諸外国の安全性情報
9 期間限定の煽り 「今月末まで半額!」 適用条件と通常価格を同等の視認性で表示
10 専門医表記の不備 「専門医が担当」 「日本〇〇学会認定 〇〇専門医」

パターン5と6だけで、美容医療系サイトの指摘のかなりの割合を占めます。まずこの2つから着手すると効率的です。

修正にかかる期間の目安

サイト規模 診断 修正 合計
10ページ未満 3〜5日 1〜2週間 約3週間
30ページ前後 1週間 3〜4週間 約5週間
100ページ以上(症例多数) 2週間 2〜3か月 約3か月

症例写真が多いサイトほど時間がかかります。1症例ごとに治療内容・費用・リスクを確認する必要があるためです。カルテを遡って費用を確認する作業が発生するため、院内スタッフの工数も見込んでおいてください。


限定解除要件をテンプレートに組み込む

要件を人の注意力で守るのではなく、ページテンプレートの構造として持たせてください。

自由診療の各ページに、以下のブロックを固定で配置します。

自由診療ページの標準ブロック構成

ブロック 内容
1 施術概要 何をする施術か。使用する薬剤・機器の一般名称
2 適応 どのような症状・希望の方が対象か
3 施術の流れ カウンセリングから施術後まで
4 料金表 総額(税込)。回数券がある場合は単価も
5 治療期間・回数 標準的な回数と期間
6 リスク・副作用 主なものを列挙。ダウンタイムの目安
7 個人差の注記 効果には個人差がある旨
8 未承認品の情報 該当する場合のみ4点を記載
9 症例写真 各症例に付記事項をセット
10 問い合わせ先 電話番号・フォームへの導線

このうち4・5・6・10が限定解除の要件に直結します。WordPress であればカスタムフィールドとして必須化し、未入力なら公開できない設定にしてください。

症例投稿のフィールド設計例

フィールド名 必須
施術名 テキスト
治療内容 テキストエリア
施術回数 数値
治療期間 テキスト
標準的費用(税込) 数値
リスク・副作用 テキストエリア
施術前画像 画像
施術後画像 画像
患者同意取得日 日付

最終行の同意取得日は医療広告ガイドラインの要件ではありません。個人情報保護の観点から、運用として持たせています。同意書の保管場所と紐づけておくと、後から確認が必要になったときに探す手間がなくなります。


Googleビジネスプロフィール(MEO)と医療広告規制

Googleビジネスプロフィールの掲載内容も、医療機関が管理している以上は広告に該当します。

MEO対策に力を入れる医療機関が増えていますが、規制の観点が抜け落ちているケースが目立ちます。

項目 注意点
ビジネス名 「【地域No.1】〇〇クリニック」のような修飾は不可。正式名称のみ
説明文 誇大・比較優良表現を使わない
投稿機能 自由診療の情報を出すなら限定解除要件が必要
写真 ビフォーアフター画像の投稿は付記が困難なため避ける
商品・サービス 価格を載せるなら総額表示
口コミへの返信 治療効果に言及しない
Q&A機能 自作自演の質問投稿は不可

ビジネス名への修飾語の追加は、Google のポリシー違反でもあります。医療広告規制と二重に問題になるため、絶対に避けてください。

写真については、ビフォーアフター画像に付記事項を画像付近へ置くことが構造的に難しい媒体です。症例は自院サイトへ誘導し、ビジネスプロフィールには院内・スタッフ・設備の写真を掲載する運用が現実的です。


求人広告は医療広告規制の対象か

医師・スタッフの採用を目的とした求人広告は、患者の受診を誘引するものではないため、原則として医療広告規制の対象外です。

誘引性の要件を満たさないためです。ただし注意点があります。

  • 求人ページに診療内容の宣伝を混ぜれば、その部分は広告に該当し得ます
  • 「日本一の症例数を誇る当院で働きませんか」といった表現は、患者も閲覧する以上リスクがあります
  • 職業安定法にもとづく労働条件の明示義務は別途適用されます

求人ページと診療案内ページは、URL構造としても分けておくと管理しやすくなります。


AI検索時代の医療広告──AI Overviewに引用されるページの条件

医療広告規制対応とAI検索最適化が重なることを表すベン図

生成AIは、条件と数値が構造化されたページを優先して引用します。医療広告ガイドラインへの対応は、その構造化とほぼ同じ作業です。

Google の AI Overview、ChatGPT、Perplexity などが医療情報を回答するとき、参照元として選ばれるページには共通点があります。

引用されやすいページの5条件

条件 医療広告規制との関係
定義が1文で明示されている 誇大表現を排すると、自然に定義が明快になる
費用が数値で確定している 限定解除の要件3そのもの
期間・回数が数値で示されている 限定解除の要件3そのもの
リスク・条件が明記されている 限定解除の要件4そのもの
出典・根拠が示されている 虚偽・誇大を避けるために必然

5条件のうち3つが、限定解除の要件と一致します。規制対応を済ませたページは、AIにとって「事実が確定していて要約しやすいページ」になります。

逆に引用されにくい書き方

  • 「効果には個人差があります」だけで数値がない
  • 「詳しくはカウンセリングで」と情報を出し惜しみする
  • 主観的な形容詞が多く、事実の密度が低い
  • 表が画像で作られており、テキストとして読めない

4つ目は技術的な問題です。料金表を画像で作っているクリニックが少なくありません。AIも検索エンジンも画像内の文字を確実には読めません。必ずHTMLのテーブルで組んでください。

医療分野はYMYLとして評価が厳しい

医療情報は Your Money or Your Life(YMYL)に分類され、検索評価の基準が一般ジャンルより厳しく設定されています。誰が書いたか、誰が監修したかが評価に直結します。

実装すべき要素 内容
執筆者情報 氏名・資格・所属を明記
監修者情報 医師名・診療科・所属先
更新日 最終更新日を明示
出典 公的機関・学会・法令へのリンク
運営者情報 医療機関の正式名称・所在地・管理者名

これらは構造化データ(Articleauthor / reviewedByMedicalWebPage)としても実装できます。可視のテキストと構造化データの両方に入れておくと、AIが著者情報を確実に認識します。

規制対応とAIO対応を同時に進める手順

  1. 自由診療の各ページに、費用・期間・リスクをテーブルで追加する
  2. 追加したテーブルを画像ではなくHTMLで組む
  3. 各見出しの直後に、結論を1文で置く
  4. 監修医師名と最終更新日をページ上部に表示する
  5. FAQを本文に置き、FAQPage の構造化データも実装する
  6. 出典として厚生労働省・学会へのリンクを張る

この6手順は、医療広告ガイドライン対応の作業とほぼ重なります。別々のプロジェクトとして進める必要はありません。一度の改修で両方を満たせます。


開業前後のタイムライン別チェック

開業準備の段階でガイドライン対応を組み込んでおくと、後から作り直す費用が発生しません。

時期 実施すること
開業6か月前 制作会社の選定時に医療広告対応の実績を確認
開業4か月前 サイト設計時に自由診療ページの標準ブロックを決定
開業3か月前 料金表を確定し、総額表示のルールを決める
開業2か月前 症例投稿のフィールド設計と同意書のひな型を用意
開業1か月前 全ページのセルフチェック38項目を実施
開業直前 判断に迷う表現を保健所へ事前相談
開業後 毎月 新規投稿の事後確認
開業後 半年ごと 料金表と実際の料金の突き合わせ

開業後にサイトを全面修正すると、制作費と同程度の費用が再度かかります。設計段階で組み込むほうが、結果的に安く済みます。


用語集

用語 意味
医療広告ガイドライン 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針
広告可能事項 限定解除なしで広告できる、医療法・告示が定める項目
限定解除 4要件を満たすことで、広告可能事項以外も掲載できる仕組み
誘引性 患者の受診を誘引する意図があること
特定性 医療機関または医師が特定できること
比較優良広告 他院より優れていると示す広告。事実でも禁止
誇大広告 事実を不当に誇張し、誤認させる広告
事例解説書 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書。図版付きのNG/OK集
ネットパトロール 厚生労働省委託によるウェブサイト監視事業
中止命令 都道府県知事が違反広告の中止を命じる行政処分
ステマ規制 広告であることを隠す表示を禁じる景品表示法の規定

医療広告ガイドラインに関するよくある質問

医療広告ガイドラインに違反すると必ず罰則を受けますか?

いいえ。まず行政指導が入り、改善すればそこで終わります。指導を無視して中止命令・是正命令にも従わない場合に、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科され得ます。ただし虚偽広告は指導を経ずに罰則の対象となる可能性があります。

自院のブログやコラムも規制の対象ですか?

対象です。医療機関名が特定でき、受診を誘引する内容であれば、ブログ記事も広告に該当します。疾患の一般的な解説であっても、末尾に自院の予約導線があれば誘引性が認められます。

「〇〇円〜」という料金表示は違反ですか?

下限のみの表示は、総額が不明確なため避けてください。幅がある場合は「33,000円〜55,000円(税込)」のように上限まで示し、追加費用の有無も明記します。

Googleマップの口コミが低評価ばかりですが、削除できますか?

医療機関が自由に削除することはできません。Googleのポリシーに違反する投稿であれば削除申請が可能です。実務上は、削除より投稿数を増やして分母を大きくするほうが現実的です。ただし謝礼と引き換えの依頼は、医療広告規制と景品表示法の両面で不可です。

未承認の医薬品を使った施術は広告できませんか?

広告できます。ただし限定解除4要件に加えて、①未承認である旨、②入手経路、③国内承認医薬品等の有無、④諸外国における安全性等に係る情報、の4点を明示する必要があります。個人輸入した医薬品・医療機器を用いる場合は必ず確認してください。

ホームページ制作会社に任せていれば安心ですか?

制作会社が医療広告に精通しているとは限りません。責任は最終的に医療機関の開設者・管理者に及びます。公開前に院内でセルフチェックを行い、判断に迷う箇所は所管の保健所に確認してください。

2026年3月30日の改正で、既存のサイトも作り直しが必要ですか?

条文の根本的な変更ではないため、全面的な作り直しは通常不要です。ただしSNS・動画での要件記載場所と、ビフォーアフター写真の付記位置については、現行の運用が新しい整理と合っているか確認してください。

医療広告ネットパトロールから通知が届いたらどうすればよいですか?

通知に記載された指摘箇所を確認し、期限内に修正して回答してください。放置すると保健所からの行政指導、さらに報告命令・立入検査へと段階が上がります。修正方針に迷う場合は、回答期限前に相談窓口へ連絡してください。

症例写真を掲載すると必ず指摘されますか?

いいえ。限定解除の4要件を満たし、写真を加工せず、症例ごとに治療内容・回数・費用・リスクを画像の付近に付記していれば、掲載できます。指摘を受けるのは、この付記が不足している場合です。

Googleビジネスプロフィールの店舗名に「地域No.1」と入れてもよいですか?

不可です。比較優良広告に該当し、あわせてGoogleのビジネス情報ポリシーにも違反します。ビジネス名には正式名称のみを登録してください。



まとめ

医療広告ガイドラインへの対応で押さえるべき点を整理します。

論点 結論
対象 自院サイト・SNS・動画を含む。制作会社や依頼したインフルエンサーの発信も医療機関の責任
広告該当性 誘引性と特定性の両方を満たすかで判定
禁止類型 虚偽・比較優良・誇大・公序良俗違反・体験談・誤認のおそれがある術前術後写真の6類型
体験談 治療効果に関するものは限定解除でも不可。唯一救済がない
限定解除 4要件。自由診療では費用とリスクの記載が追加で必須
ビフォーアフター 限定解除+無加工+症例ごとの付記の3条件で掲載可
2026年改正 SNS・動画での要件記載場所と、画像付近への付記が明確化
罰則 中止命令違反・虚偽広告で6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

規制対応は、情報を削る作業ではありません。費用・期間・リスクを具体的に書き足す作業です。そして書き足した情報は、そのまま検索ユーザーとAI検索が求めている情報でもあります。

株式会社HUMEDITは、グループ11院・多科目の運営で培った知見をもとに、医療機関のウェブサイト制作から医療広告ガイドライン対応、SEO・MEO・広告運用までを一貫してご支援しています。自院サイトの現状確認からご相談ください。


参考・出典

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