薬機法とは?規制対象・第68条の広告ルールと医師・医療機関との関係を解説
この記事でわかること
- 薬機法の正式名称と目的、規制する5つの対象
- 製造販売までの承認・認証・許可という関門
- 広告を縛る未承認品の広告禁止(第68条)と誇大広告の禁止
- 薬機法と医師・医療機関との関係(自己診療と販売業規制の境界)
- 医師の個人輸入が薬機法上どう位置づけられるか
薬機法とは、医薬品や医療機器などの品質・有効性・安全性を確保するための日本の基本的な法律です。正式名称は長く、条文も多岐にわたるため、全体像がつかみにくいと感じる先生も少なくありません。この記事では、医療機関の運営に関わる範囲にしぼって、薬機法の骨格と、医師・医療機関との関係を整理します。自由診療や個人輸入を検討する際の土台知識として、お役立てください。
薬機法とは?正式名称は「医薬品医療機器等法」
薬機法の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。「医薬品医療機器等法」と略され、さらに縮めて「薬機法」と呼ばれています。
もとは「薬事法」という名称でした。2014年(平成26年)11月の施行にあわせて現在の名称へと改められ、再生医療等製品が新たに規制対象へ加わるなど、内容も見直されています。呼び名が変わっても、目的の中心にあるのは「品質・有効性・安全性の確保」と「保健衛生上の危害の防止」です。法律の全文はe-Gov法令検索で確認できます。
薬機法が規制する5つの対象
薬機法は、大きく5つのカテゴリの製品を規制の対象としています。それぞれ承認や表示、広告のルールが異なります。
| 対象 | 概要 |
|---|---|
| 医薬品 | 病気の診断・治療・予防に用いられるもの。医療用医薬品と一般用医薬品に分かれます。 |
| 医薬部外品 | 人体への作用が緩やかなもの。指定された効能の範囲で扱われます。 |
| 化粧品 | 清潔・美化など、人体を清潔にし容ぼうを整える目的のもの。 |
| 医療機器 | 診断・治療などに用いる機器・器具。リスクに応じてクラス分類されます。 |
| 再生医療等製品 | 細胞や遺伝子を用いた製品。2014年の改正で独立したカテゴリになりました。 |
医療機器は、人体への影響の大きさに応じてクラスⅠ〜Ⅳに分類され、クラスが上がるほど厳格な手続きが求められます。クリニックで扱う機器がどのクラスに当たるかは、導入判断の重要なポイントになります。
承認・認証・許可|製造販売までの関門
医薬品や医療機器を日本国内で製造販売するには、原則として国の承認などを受ける必要があります。この関門があるからこそ、市場に出回る製品の品質と安全性が担保されています。
製品ごとにリスクが異なるため、手続きも「承認」「認証」「届出」と段階が分かれています。リスクの高いものほど、国(またはPMDA)による審査が厳格になります。加えて、製品を市場に出す企業には「製造販売業許可」が、製造を行う施設には「製造業の登録」などが求められます。つまり、製品の承認と、それを扱う事業者の許可という二重の仕組みで安全性を守っているのが薬機法の特徴です。審査や制度の詳細は医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開しています。
薬機法の広告規制|未承認品の広告は禁止(第68条)
薬機法でとくに注意したいのが、広告に関する規制です。なかでも第68条は、承認前の製品を広告することを、誰に対しても禁じています。
第68条は、承認・認証を受けていない医薬品・医療機器・再生医療等製品について、その名称・製造方法・効能・効果・性能を広告してはならないと定めています。ポイントは「何人も(誰であっても)」という点です。医療機関やクリニック向けのサイトであっても、一般の人が閲覧できる状態で未承認品の効能をうたえば、広告に該当すると判断されるおそれがあります。
あわせて、承認された製品であっても、事実に反する表現や効果を誇張する表現は、誇大広告として第66条で禁じられています。医療機関のウェブサイトは、これらの薬機法の広告規制に加えて、医療法や医療広告ガイドラインの制約も受けます。「未承認の機器名や効能を公開ページに載せない」「効果を断定・誇張しない」という姿勢は、複数の法令に共通する安全策といえます。
薬機法と医師・医療機関の関係
医師・医療機関は、薬機法とどう関わるのでしょうか。「診療で薬や機器を使う立場」と「それらを扱う事業者としての立場」を分けて考えると、整理しやすくなります。
診療で使う分には「販売業」の規制の外
医師が自らの診療の中で医薬品を投与したり、医療機器を使用したりする行為は、薬機法が規制する「販売」「授与」とは区別されます。医師は医師法にもとづく裁量のもとで、患者の治療に必要な医薬品・機器を用いることができます。ただしこれは、あくまで自らの診療の範囲内という前提があってのことです。
未承認品を診療で使うときは自己責任が原則
国内未承認の医薬品や機器を診療で使う場合、その判断と責任は用いる医師に帰属します。承認品であれば公的な健康被害救済制度の対象になりますが、未承認品はその枠組みの外に置かれます。だからこそ、供給元の信頼性の確認や、患者への十分な説明と同意が欠かせません。
仕入れて他者に売れば「販売業」になる
一方で、医薬品や機器を仕入れて他院や患者、事業者へ販売・授与する行為は、業として行えば薬機法の販売業などの規制対象になります。無許可で行えば違反となるため、「診療で使う」ことと「売る」ことの線引きは、医療機関にとって重要な分かれ目です。
医師の個人輸入と薬機法|輸入確認証という枠組み
国内未承認の薬や機器を、医師が自らの診療のために海外から取り寄せる方法が「医師の自己診療用の個人輸入」です。この場合、地方厚生局へ申請し「輸入確認証」の交付を受けるのが原則です。
輸入確認証は、2020年(令和2年)9月1日から、従来の「薬監証明」に代わって用いられている手続きです。営業目的ではなく、医師が自己の診療に用いるための輸入であることを、国が確認するためのものです。取り寄せた薬や機器を第三者へ転売・譲渡することはできません。手続きの要件は、近畿厚生局「医師等が治療に用いるために輸入する場合」や厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」で確認できます。個人輸入の法的な位置づけや責任の所在については、医師の個人輸入と法令の記事でくわしく整理しています。
薬機法に違反するとどうなる?
薬機法の違反には、行政指導から罰則まで、段階的な対応が用意されています。広告規制や無許可営業の違反は、行政指導や業務改善命令の対象となり、悪質な場合には罰則が科されることもあります。
近年は、誇大広告などに対する課徴金制度も導入され、規制は強まる傾向にあります。医療機関にとっては、罰則そのものよりも、行政指導やレピュテーション(信頼)へのダメージが実務上の大きなリスクになりがちです。「グレーかもしれない表現は載せない」という保守的な運用が、結果的に医療機関を守ります。具体的な条文や運用は変わり得るため、判断に迷う場合は所管の行政機関や薬事の専門家へご相談ください。
まとめ|薬機法の骨格を押さえ、安全側で運用する
薬機法は、医薬品・医療機器などの品質と安全性を守るための基本法です。医師・医療機関にとっては、「診療で使う」範囲と「売る・広告する」範囲の線引きを意識することが、法令順守の出発点になります。とくに未承認品の広告禁止(第68条)は、公開ページの作り方に直結する重要なルールです。
個人輸入や未承認機器の導入を検討する際は、制度を正しく理解し、迷ったら専門家に確認する。この基本姿勢が、医療機関と患者の双方を守ります。HUMEDITは、検査所を運営してきた立場から、薬機法に配慮した個人輸入の手続き代行で医療機関を支えています。手続きや対応範囲について、医療従事者の先生はお気軽にご相談ください。
関連ページ:医師の個人輸入と法令/医師の薬の個人輸入代行サービス/輸入事業のご案内
よくある質問
Q. 薬機法と薬事法は違う法律ですか?
A. 同じ法律です。かつての「薬事法」が2014年に改正・改称され、現在の「医薬品医療機器等法(薬機法)」になりました。再生医療等製品が新たに規制対象へ加わるなどの見直しも行われています。
Q. 未承認の医療機器を、医療機関向けサイトなら紹介してよいですか?
A. 一般の人が閲覧できる状態であれば、医療機関向けをうたっていても、未承認品の名称や効能の掲載は薬機法第68条に触れるおそれがあります。公開ページでは具体的な機種名や効能効果を載せず、医療従事者へ個別に案内する運用が安全です。
Q. 医師が診療で未承認薬を使うのは薬機法違反ですか?
A. 医師が自らの診療の範囲で用いること自体は、薬機法が規制する「販売」とは区別されます。ただし未承認品の使用は医師の自己責任が原則で、公的な健康被害救済制度の対象外となる点に注意が必要です。患者への十分な説明と同意が欠かせません。
Q. 個人輸入した薬を患者に販売してもよいですか?
A. できません。輸入確認証を用いて輸入した未承認品は、申請した医師本人が自己の診療に用いる場合に限られます。第三者への転売・譲渡は薬機法や関税法で禁じられています。
Q. 判断に迷ったときはどこに相談すればよいですか?
A. 制度の詳細は所管の地方厚生局や厚生労働省、PMDAが公開しています。個別の広告表現や事業スキームの適法性は、薬事に詳しい弁護士や専門家への相談が確実です。輸入手続きの実務については、当社のような代行事業者もご活用いただけます。