株式会社HUMEDIT

医療DX推進体制整備加算は2026年6月に廃止|後継加算への移行手順

医療DX推進体制整備加算は、2026年6月1日の診療報酬改定で廃止されました。 後継として新設されたのが「電子的診療情報連携体制整備加算」です。旧加算を算定していた医療機関も、自動では移行されません。地方厚生局への届出をあらためて行わなければ、加算は算定できなくなります。

私たち株式会社HUMEDITは、グループで11院・多科目のクリニック運営に関わっています。2026年6月の改定前後、現場で最も混乱が起きたのがこの加算でした。「名前が変わっただけだろう」と考えて届出を出さず、6月分の算定を落とした医療機関を実際に見ています。

この記事では、旧加算が何だったのかを整理したうえで、新しい加算の点数・施設基準・届出手順を、今日から動ける形で解説します。

⚠️ 本記事は2026年7月時点の公開情報にもとづく整理です。診療報酬の算定は個別の状況で判断が変わります。最終的な確認は必ず管轄の地方厚生(支)局にお願いします。点数・要件は改定や疑義解釈で変わる可能性があります。

この記事でわかること

  • 医療DX推進体制整備加算がいつ、なぜ廃止されたのか
  • 後継の電子的診療情報連携体制整備加算の点数(初診・再診・入院)
  • 加算1・2・3それぞれの施設基準の違い
  • マイナ保険証利用率30%という要件の正確な数え方
  • 旧加算から自動移行されない理由と、再届出の手順
  • 加算を取った場合の年間収益シミュレーション
  • 移行チェックリスト24項目

医療DX推進体制整備加算とは何だったのか

医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認や電子処方箋などの医療DX基盤を整えた医療機関を、初診時に評価した加算です。 2024年6月に新設され、2026年5月31日をもって廃止されました。

制度の目的は、マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)と、医療情報の電子的なやり取りを普及させることでした。

沿革

時期 内容
2024年6月 新設。初診時に算定する加算として運用開始
2024年10月 マイナ保険証利用率の基準値を引き上げ
2025年4月 医科は6区分に再編。電子処方箋の有無×利用率3段階の組み合わせ
2025年10月 利用率の基準値をさらに引き上げ
2026年3月 利用率の基準値を再度引き上げ
2026年5月31日 廃止
2026年6月1日 後継の電子的診療情報連携体制整備加算を施行

2025年4月以降の6区分は、電子処方箋を導入しているかどうかで大きく2グループに分かれ、その中でマイナ保険証利用率によって3段階に分かれる構造でした。点数は改定と経過措置のたびに動いており、時期によって異なります。過去分の請求内容を確認する必要がある場合は、該当時点の告示を管轄の厚生局でご確認ください。

なぜ2年で廃止されたのか

短命に終わった背景には、制度の狙いが変わったことがあります。

新設当時の主眼は「オンライン資格確認とマイナ保険証を広げること」でした。しかし普及が一定まで進むと、次の課題は医療機関どうしで診療情報を共有できるかに移ります。あわせて、医療機関を狙ったランサムウェア被害が続いたため、サイバーセキュリティ対策の評価も必要になりました。

そこで「マイナ保険証を使えるか」ではなく「診療情報を電子的に連携できるか」を評価軸に据え直したのが、後継の加算です。名称が「医療DX推進」から「電子的診療情報連携」に変わったのは、この評価軸の移動を反映しています。


【最重要】旧加算は自動移行されません

旧加算の届出は、新加算の届出として引き継がれません。あらためて地方厚生(支)局へ届出を行う必要があります。

ここが最大の落とし穴です。名称変更や点数改定であれば、従前の届出がそのまま有効になるケースもあります。しかし今回は旧加算を「廃止」し、新加算を「新設」する扱いです。別の加算として、新規に届出しなければなりません。

届出を忘れた場合どうなるか

状況 結果
2026年6月1日までに届出済み 6月診療分から算定可
届出が遅れた 受理された月の翌月(または当月)以降しか算定できない
届出していない 加算は一切算定できない。遡っての算定は不可

遡及算定はできません。届出が遅れた分は、そのまま取り逃しになります。

今から届出しても間に合うのか

間に合います。 6月分は取り逃しても、届出が受理されればその後の診療分から算定できます。

まだ届出していない医療機関は、今月中の提出を目指してください。要件の整備に時間がかかる項目(電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス)がある場合は、まず加算3で届出し、要件が整った段階で上位区分に変更する進め方が現実的です。


電子的診療情報連携体制整備加算の点数

初診料加算1・2・3の点数が段階的に上がることを表した図

初診時は加算1が15点、加算2が9点、加算3が4点です。再診時は月1回に限り2点、入院時は入院初日に加算1が160点、加算2が80点となります。

旧加算の最高点数から引き上げられており、要件を満たせる医療機関にとっては増収要因です。

点数一覧

算定場面 区分 点数 算定回数
初診料 加算1 15点 初診時
初診料 加算2 9点 初診時
初診料 加算3 4点 初診時
再診料・外来診療料 2点 月1回
入院料 加算1 160点 入院初日
入院料 加算2 80点 入院初日

再診時の2点は、初診料の加算1〜3のいずれかを届出している場合に算定できます。初診の届出をしていないのに再診で算定することはできません。

何が点数を分けるのか

初診料の3区分を分けるのは、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスへの対応状況です。

区分 電子処方箋 電子カルテ情報共有サービス 点数
加算1 15点
加算2 ○ または ○ いずれか一方 9点
加算3 4点

加算1は双方が必要、加算2はいずれか一方、加算3はどちらも不要です。ただし加算3でも、後述する共通の施設基準はすべて満たす必要があります。


全加算に共通する施設基準

全加算共通の施設基準6項目を表すチェックリストと受付機器の図

加算3であっても、下記の共通要件をすべて満たさなければ算定できません。マイナ保険証利用率30%以上が最大の関門です。

区分によらず必要な項目を整理します。

# 要件 補足
1 レセプトのオンライン請求を行っている 紙・電子媒体では不可
2 明細書を患者へ無償で交付している 希望者のみの交付では不十分
3 オンライン資格確認の体制を有している 顔認証付きカードリーダーの運用
4 マイナ保険証利用率が30%以上 数え方は後述
5 マイナポータルの医療情報にもとづく健康管理の相談に応じる体制 患者から相談があった際の対応体制
6 院内掲示および原則ウェブサイトでの公表 掲示内容は3項目(後述)

このうち実務上のハードルは圧倒的に4番です。1〜3、5、6は運用と掲示の整備で対応できますが、利用率は患者の行動に依存します。

院内掲示・ウェブ公表の3項目

要件6で掲示・公表が求められるのは、次の3点です。

  • 医療DXを通じて、質の高い医療を提供できるよう取り組んでいること
  • オンライン資格確認により取得した診療情報等を、診療に活用していること
  • 電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスへの対応状況(該当する場合)
  • 明細書を無償で交付していること

院内掲示だけでは足りません。自院のウェブサイトにも掲載してください。ウェブサイトを持たない場合を除き、原則として公表が必要です。


初診料 加算1の追加要件

加算1は、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスの双方に対応していることが条件です。

15点を取るための追加要件を整理します。

電子処方箋に関する要件

次のいずれかを満たしてください。

  • 電子処方箋を発行できる体制を有している
  • 調剤情報を電子処方箋管理サービスへ登録できる体制を有している

医科・歯科であれば通常は前者、院内調剤を行う場合は後者が該当します。

電子カルテに関する要件

以下の「ア〜ウのすべて」または「エ」を満たす電子カルテが必要です。

記号 要件
医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに準拠している
電子処方箋管理サービスへの接続インターフェースを有している
電子カルテ情報共有サービスへの接続インターフェースを有している
厚生労働省の認証を受けた電子カルテ製品である

「エ」を満たす製品を使っていれば、ア〜ウの個別確認は不要です。ベンダーに認証取得状況を確認してください。

診療情報共有ネットワークに関する要件

電子カルテ情報共有サービス、または地域医療情報連携ネットワークとの接続が求められます。ここも「アを満たす」または「イおよびウを満たす」という選択構造になっています。自院の環境がどちらに当てはまるかは、ベンダーと一緒に確認するのが確実です。


初診料 加算2・加算3の要件

加算2は電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスの「いずれか一方」、加算3はどちらも不要です。

加算2(9点)

加算1と同じ項目を、「双方」ではなく「いずれか」満たせば該当します。

現実的なパターンは次の2つです。

  • 電子処方箋は導入済みだが、電子カルテ情報共有サービスは未対応
  • 電子カルテ情報共有サービスに参加しているが、電子処方箋は未導入

どちらか片方でも整っていれば9点です。加算3の4点との差は5点=50円。初診患者が月300人なら、月15,000円の差になります。

加算3(4点)

電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスの要件はありません。共通の施設基準6項目のみで算定できます。

まず加算3で届出を出し、算定を止めないことを優先してください。 上位区分への変更は後から届出できます。要件が整うまで届出を待つと、その期間の算定をすべて失います。

再診料・外来診療料の2点

初診料の加算1〜3いずれかを届出していれば、再診時に月1回2点を算定できます。追加の施設基準はありません。

見落としやすいのがこの2点です。初診の加算は意識していても、再診分の算定漏れが起きているケースがあります。レセプトコンピュータの設定を確認してください。


入院料加算とサイバーセキュリティ要件

入院料加算は初日に算定し、加算1が160点、加算2が80点です。加算1にはバックアップと業務継続計画の具体的な要件が課されます。

外来だけの医療機関には関係しませんが、有床診療所・病院では大きな点数です。

加算1・2の共通要件

要件 内容
ガイドライン準拠 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに準拠
責任者の配置 専任の医療情報システム安全管理責任者を配置
職員研修 年1回以上の研修を実施
資格 情報セキュリティマネジメント関連資格の保有が望ましい

「専任」という点に注意してください。兼任では要件を満たしません。

加算1のみの追加要件

十分なサイバーセキュリティ対策として、次が求められます。

  • 複数の方式でバックアップを確保し、一部はネットワークから切り離してオフライン保管する
  • 日次バックアップは少なくとも3世代を確保する
  • 業務継続計画(BCP)を策定し、年1回以上の訓練を実施する
  • 訓練結果にもとづいて改善対応を行う

ランサムウェア被害では、ネットワークに接続されたバックアップも同時に暗号化されます。オフライン保管が明記されたのは、実際の被害事例を踏まえたものです。

訓練は「実施した」だけでは足りません。結果から課題を洗い出し、改善したことまでを記録に残してください。


マイナ保険証利用率30%の正確な数え方

カードリーダーと利用率30%を示す円グラフの図

利用率は、算定する月の3か月前のレセプト件数を基準に算出します。3か月前の数値が基準に届かない場合、4か月前または5か月前の数値を用いることもできます。

ここを誤解している医療機関が多いため、丁寧に整理します。

計算式

マイナ保険証利用率
= マイナ保険証によるオンライン資格確認の件数
  ÷ 総レセプト件数(医科・歯科・調剤の該当分)

分母は総レセプト件数です。来院患者数ではありません。

どの月の数値を使うか

算定する月 使える基準月
2026年6月 2026年1月・2月・3月のいずれか
2026年7月 2026年2月・3月・4月のいずれか
2026年8月 2026年3月・4月・5月のいずれか

3か月前が原則で、届かない場合は4か月前・5か月前も使えます。3つのうち最も高い月を選べるという理解で運用してください。

利用率の確認方法

医療機関等向け総合ポータルサイトで、自院の月次の利用率を確認できます。毎月確認し、記録として残してください。届出時にも、また指導時にも根拠が必要になります。


利用率が30%に届かないときの実務策

利用率は患者の行動に依存しますが、声かけの設計次第で数値は動きます。私たちのグループでも、受付フローの変更で20%台から30%台へ改善した院がありました。

具体的に効いた施策を挙げます。

受付での声かけを固定化する

「マイナンバーカードはお持ちですか」では動きません。カードリーダーへ誘導する動作とセットの声かけにしてください。

効きにくい声かけ 効く声かけ
「保険証をお願いします」 「マイナンバーカードをお持ちなら、こちらの機械にお願いします」
「マイナ保険証は使えますか」 「マイナンバーカードだと、お薬の情報も共有できます。こちらへどうぞ」
何も言わない リーダーを指し示しながら案内する

受付スタッフによって声かけがばらつくと、数値も安定しません。文言を紙に書いて受付に置いてください。

患者にとっての利点を伝える

患者側にメリットが見えないと協力は得られません。伝えるべきは次の3点です。

  • 過去の処方や検診結果を医師が確認できるため、重複した薬や検査を避けやすい
  • 高額療養費の限度額適用認定証を、別途申請しなくても使える
  • 就職・転職で保険が変わっても、カードはそのまま使える

2番目の限度額適用認定証は、患者にとって金銭的な利点が具体的です。反応が良い項目です。

導線と機器の配置

施策 効果
カードリーダーを受付の正面に置く 患者が自然に気づく
順番待ちの動線上にポスターを配置 待ち時間に読まれる
顔認証と暗証番号の両方を案内 暗証番号を忘れた患者を取り逃さない
高齢の患者には職員が操作を補助 「難しそう」で諦めさせない

4番目は手間がかかりますが、効果は確実です。一度使えた患者は次回から自分で操作します。


電子処方箋の導入手順

電子処方箋は、加算1・2を狙う場合に必要です。オンライン資格確認の環境があれば、追加の工事なしで進められるケースが多くあります。

導入の流れを整理します。

手順 目安期間
1 医療機関等向け総合ポータルサイトで利用申請 即日
2 電子カルテ・レセコンベンダーへ対応可否を確認 1〜2週間
3 HPKIカード(医師資格証)を申請 1〜3か月
4 システムの改修・設定 2〜4週間
5 運用テスト 1〜2週間
6 運用開始・ポータルサイトへ登録 即日

最も時間がかかるのは3番のHPKIカードです。 電子署名に必要な資格証で、申請から交付まで数か月かかることがあります。ここが全体のボトルネックになります。

HPKIカードの取得を待っている間について、一定の条件下で要件を満たすとみなす経過措置が設けられています。適用可否は管轄の厚生局に確認してください。


電子カルテ情報共有サービスとは

電子カルテ情報共有サービスは、医療機関の間で患者の診療情報を電子的にやり取りする全国的な仕組みです。

加算1を取るうえで避けて通れない要件です。

共有される情報

分類 内容
傷病名 診断された病名
アレルギー情報 薬剤・食物などのアレルギー
感染症情報 特定の感染症の情報
薬剤禁忌情報 使用してはならない薬剤
検査情報 生活習慣病関連・救急時に必要な検査値
処方情報 処方された薬剤
健診情報 特定健診などの結果
診療情報提供書・退院時サマリー 施設間の文書

転院・救急搬送のときに、初めて診る患者の背景を把握できる点が最大の価値です。

導入時の注意

導入して終わりではありません。運用開始日を医療機関等向け総合ポータルサイトへ入力し、公表するところまでが要件です。

システムを入れたのに登録を忘れ、要件を満たしていない状態になっているケースがあります。ベンダーの作業完了報告を受けたら、ポータルサイトの表示を自院で確認してください。


届出の手順と必要書類

届出は管轄の地方厚生(支)局へ提出します。電子申請、郵送、持参のいずれかで受け付けられます。

手順

内容
1 自院がどの区分を満たすか判定する
2 マイナ保険証利用率を総合ポータルサイトで確認し、記録する
3 院内掲示物を作成・掲示する
4 自院ウェブサイトに公表内容を掲載する
5 届出書(様式)を作成する
6 管轄の地方厚生(支)局へ提出する
7 受理後、算定を開始する

3番と4番を先に済ませてください。届出時点で掲示・公表が完了している必要があります。

提出前の確認事項

  • 届出書の区分(加算1・2・3)が自院の状況と一致しているか
  • マイナ保険証利用率の根拠となる月と数値を記載したか
  • ウェブサイトの該当ページURLを把握しているか
  • 明細書の無償交付が「全患者」に対して行われているか
  • オンライン請求が実施されているか

様式や提出先は地域によって運用が異なります。管轄の厚生局のウェブサイトで最新の様式を取得してください。


廃止された医療情報取得加算との関係

医療情報取得加算も、電子的診療情報連携体制整備加算の新設にあわせて廃止されました。2つの加算が1つに統合された形です。

旧制度では2つの加算が併存していました。

旧加算 内容 状況
医療DX推進体制整備加算 医療DXの体制整備を評価 2026年5月31日廃止
医療情報取得加算 患者の医療情報を取得・活用したことを評価 2026年5月31日廃止
電子的診療情報連携体制整備加算 上記2つを統合・再編 2026年6月1日新設

2つの加算をそれぞれ算定していた医療機関は、新加算1本に置き換わると理解してください。算定の考え方が変わるため、レセプトコンピュータのマスタ更新をベンダーに確認してください。


加算を取るとどれだけ増収になるか

初診患者が月300人・再診患者が月1,000人の診療所が加算1を取ると、年間で約78万円の増収になります。

具体的に計算します。1点=10円です。

前提

項目 数値
初診患者 月300人
再診患者 月1,000人(うち月内初回が800人)

区分別の年間増収

区分 初診分 再診分 年間合計
加算1(15点) 45,000円/月 16,000円/月 約73万円
加算2(9点) 27,000円/月 16,000円/月 約52万円
加算3(4点) 12,000円/月 16,000円/月 約34万円

初診300人×15点×10円=45,000円、再診の月内初回800人×2点×10円=16,000円という計算です。

加算3と加算1の差は年間約39万円

加算3で満足せず、加算1を目指す価値があるかどうかは、この差額と導入コストの比較になります。

検討項目 目安
加算3→加算1の年間増収 約39万円
電子処方箋の導入費用 ベンダーにより幅がある
電子カルテ情報共有サービス対応費用 同上
補助金 医療DX関連の補助金が利用できる場合がある

補助金の対象・金額は時期により変わります。ベンダーの見積もりと補助金の適用可否を並べて判断してください。


よくある失敗パターン

私たちが実際に見てきた取り逃しは、要件を満たせなかったケースより「手続きの抜け」が原因のケースのほうが多いです。

# 失敗 対策
1 名称変更だと思い、届出を出さなかった 新規届出が必要。旧届出は無効
2 要件が整うまで届出を待った まず加算3で届出し、後から区分変更する
3 ウェブサイトへの公表を忘れた 院内掲示だけでは不足
4 再診の2点を算定していない レセコンの設定を確認
5 利用率を「来院患者数」で計算していた 分母はレセプト件数
6 3か月前の数値だけ見て諦めた 4か月前・5か月前も使える
7 電子カルテ情報共有サービスの運用開始日をポータルに未登録 システム導入後に登録まで完了させる
8 明細書を希望者のみに交付していた 全患者への無償交付が要件
9 入院加算で責任者を兼任にしていた 「専任」が要件
10 BCP訓練を実施したが記録がない 訓練結果と改善対応を文書化

1番と3番が特に多いパターンです。届出と掲示・公表は、要件整備とは別のタスクとして管理してください。


移行チェックリスト

上から順に確認し、すべて埋まった段階で届出してください。

共通要件(9項目)

☐ レセプトのオンライン請求を実施している ☐ 明細書を全患者へ無償交付している ☐ オンライン資格確認の体制を運用している ☐ マイナ保険証利用率を総合ポータルサイトで確認した ☐ 利用率30%以上を満たす月を特定した ☐ マイナポータルの医療情報にもとづく相談対応体制を整えた ☐ 院内掲示物を作成し、掲示した ☐ 自院ウェブサイトに公表内容を掲載した ☐ 掲示・公表の内容が4項目すべてを含んでいる

加算1・2を狙う場合(7項目)

☐ 電子処方箋の発行体制、または調剤情報登録体制がある ☐ HPKIカードを取得済み、または申請済み ☐ 電子カルテがガイドラインに準拠している ☐ 電子処方箋管理サービスへの接続インターフェースがある ☐ 電子カルテ情報共有サービスへの接続インターフェースがある ☐ 電子カルテ情報共有サービスの運用開始日をポータルに登録した ☐ ベンダーに厚生労働省認証製品かどうか確認した

入院料加算を狙う場合(8項目)

☐ 専任の医療情報システム安全管理責任者を配置した ☐ 年1回以上の職員研修を計画・実施した ☐ 医療情報システムの安全管理ガイドラインに準拠している ☐ 複数方式のバックアップを確保している ☐ バックアップの一部をオフラインで保管している ☐ 日次バックアップを3世代以上確保している ☐ 業務継続計画(BCP)を策定した ☐ BCP訓練を年1回以上実施し、改善対応を記録した

合計24項目です。


医療DX対応が集患にも効く理由

電子処方箋やオンライン資格確認への対応状況は、患者が医療機関を選ぶ判断材料になっています。加算のために整えた体制は、そのまま集患の材料になります。

加算の話は収益の話として語られがちですが、集患への効果も見過ごせません。

患者の検索行動との接点

患者の検索 対応していると訴求できること
「マイナ保険証 使える 病院」 オンライン資格確認に対応している
「電子処方箋 対応 クリニック」 電子処方箋を発行できる
「〇〇市 内科 予約」 ウェブサイトに公表した情報が接点になる

要件6で作成した公表ページは、検索エンジンとAI検索の両方に読まれます。掲示物の内容をそのままコピーするのではなく、患者にとっての利点を書き添えてください。

AI検索に引用される書き方

Google の AI Overview や生成AIが医療機関の情報を回答するとき、参照されやすいのは条件と対応状況が明記されたページです。

  • 「マイナ保険証に対応しています」だけでなく、受付での手順を書く
  • 電子処方箋について、患者側の受け取り方(引換番号など)を説明する
  • 対応開始日を明記する

日付と手順が入ったページは、AIが要約しやすくなります。制度対応のために作ったページを、集患の資産に変えてください。


院内掲示文のテンプレート

掲示物は自作で構いません。要件の4項目を漏らさず、患者が読んで理解できる表現にしてください。

そのまま使える文面を用意しました。院名と対応状況を差し替えてご利用ください。

加算1を届出する場合

【医療DXの推進に関する当院の取り組みについて】

当院では、質の高い医療を提供するため、医療DXの推進に取り組んでいます。

1. オンライン資格確認により取得した診療情報等の活用
   マイナンバーカードによるオンライン資格確認で取得した
   お薬の情報や特定健診の結果などを、診療に活用しています。

2. 電子処方箋への対応
   当院は電子処方箋を発行できる体制を有しています。

3. 電子カルテ情報共有サービスへの対応
   当院は電子カルテ情報共有サービスに参加しています。
   (運用開始日:20XX年X月X日)

4. 明細書の無償交付
   診療内容の明細書を、すべての患者様に無償で交付しています。

○○クリニック

加算3を届出する場合

【医療DXの推進に関する当院の取り組みについて】

当院では、質の高い医療を提供するため、医療DXの推進に取り組んでいます。

1. オンライン資格確認により取得した診療情報等の活用
   マイナンバーカードによるオンライン資格確認で取得した
   お薬の情報や特定健診の結果などを、診療に活用しています。

2. マイナンバーカードの健康保険証利用について
   受付のカードリーダーでご利用いただけます。
   お薬や健診の情報を医師が確認できるため、
   より安全で適切な診療につながります。

3. 明細書の無償交付
   診療内容の明細書を、すべての患者様に無償で交付しています。

○○クリニック

掲示場所は、患者の目に入る受付・待合室です。掲示したことがわかるように、写真を撮って記録に残してください。指導時に説明を求められる場合があります。


ウェブサイト公表ページの作り方

掲示物をそのまま貼るだけでは、要件は満たせても集患には効きません。患者にとっての利点を書き添えたページにしてください。

最低限の構成

ブロック 内容
見出し 「医療DXの推進に関する取り組み」
リード文 何のための取り組みかを1〜2文で
取り組み項目 要件の4項目を箇条書きで
患者向けの案内 マイナ保険証の使い方、電子処方箋の受け取り方
更新日 最終更新日を明記
問い合わせ先 電話番号・フォームへの導線

集患に効かせるために加える内容

要件を満たすだけなら上の6ブロックで足ります。ここに次を加えると、検索とAI検索の両方から流入が生まれます。

  • 受付でマイナ保険証を使う手順(顔認証・暗証番号の選び方まで)
  • 暗証番号を忘れた場合の対応
  • 電子処方箋の引換番号の扱いと、薬局での流れ
  • 対応開始日
  • よくある質問(マイナ保険証を持っていない場合はどうなるか等)

「マイナ保険証 使い方」「電子処方箋 薬局 どうする」といった患者側の検索に対応できます。制度対応のページを、そのまま集患ページに変えてください。

更新日を必ず入れる

制度は変わります。更新日のないページは、検索エンジンにもAIにも「古い可能性がある情報」と扱われます。改定のたびに日付を更新してください。


診療科別の取りやすさ

要件そのものは診療科によらず同じですが、マイナ保険証利用率と電子処方箋の実装しやすさに差が出ます。

私たちがグループ内の複数科目で対応した経験から、傾向を整理します。

診療科 利用率の傾向 電子処方箋 注意点
内科(かかりつけ) 高め。定期通院者が慣れる 導入価値が高い 高齢患者の操作補助が鍵
小児科 低め。保護者が子のカードを持参しない 処方は多い 家族分のカード持参を促す案内が必要
整形外科 中程度 処方が中心なら有効 高齢患者比率が高く補助が必要
皮膚科 中程度 外用薬中心でも対応可 自由診療併設なら会計動線に注意
眼科 中程度 点眼薬の処方に対応 高齢患者の操作補助
耳鼻咽喉科 低め。季節性の初診が多い 有効 繁忙期の受付負荷が上がる
精神科・心療内科 低め 有効だが配慮が必要 情報共有への抵抗感に丁寧な説明を
歯科 低め 処方が少なく効果が限定的 まず加算3を確実に取る

小児科と耳鼻咽喉科は利用率が伸びにくい傾向があります。保護者に「お子さんのマイナンバーカードもお持ちください」と事前に案内するだけで数値が動きます。予約確認のメールやLINEに一文入れてください。

精神科・心療内科では、診療情報が共有されることへの抵抗感が出やすい領域です。共有される情報の範囲を具体的に説明し、患者が選べることを伝えてください。


規模別の進め方

無床診療所は加算3から、有床診療所・病院は入院料加算まで含めた計画が必要です。

規模 優先順位 期間の目安
無床診療所(1〜2名体制) ①加算3で届出 ②利用率を30%へ ③電子処方箋 3〜6か月
無床診療所(複数医師) ①加算3で届出 ②電子処方箋(HPKI全医師分) ③情報共有サービス 6〜9か月
有床診療所 外来の加算3と並行して入院料加算2の要件整備 6〜12か月
病院 責任者配置とBCPを先行。外来は加算3で確保 9〜18か月

複数医師の医療機関では、HPKIカードを医師全員分申請する必要があります。1名分だけ取得しても、その医師の処方しか電子化できません。申請の順番と期間を逆算してください。


サイバーセキュリティ対策の実装

サーバー・NAS・オフライン外付けHDD・クラウドによる多層バックアップの図

入院料加算1のバックアップ要件は、対策として合理的です。加算を取らない医療機関でも実施をおすすめする内容ではなく、実施してください。

医療機関を狙ったランサムウェア被害は継続しています。電子カルテが暗号化されると、診療そのものが止まります。

3-2-1ルールを基準にする

数字 意味
3 データを3つ保持する(原本+バックアップ2つ)
2 2種類の異なる媒体に保存する
1 1つはオフサイト(またはオフライン)に置く

加算1が求める「複数方式・一部オフライン・日次3世代」は、この考え方に沿っています。

具体的な構成例

保存先 頻度 保持
一次 サーバ内蔵ディスク 日次 3世代
二次 NAS(別筐体) 日次 7世代
三次 外付けHDD(運用後は必ず取り外す 週次 4世代
四次 クラウドバックアップ 日次 30日

三次の外付けHDDが、オフライン保管に該当します。接続したままにすると意味がありません。 バックアップ完了後に必ず取り外し、施錠できる場所に保管してください。担当者と手順を文書で決めてください。

BCP訓練の実施例

年1回の訓練は、机上訓練でも構いません。実際に行う内容の例を挙げます。

手順 内容
1 「電子カルテが起動しない」という想定を全職員に共有
2 紙運用への切り替え手順を実演(問診票・処方箋の様式を確認)
3 患者への説明文の読み合わせ
4 ベンダー・保健所への連絡先と連絡順序を確認
5 バックアップからの復旧手順をベンダーと確認
6 所要時間を計測し、課題を洗い出す
7 改善事項を記録し、次年度の訓練に反映

6番と7番まで実施して記録に残してください。実施記録がなければ、要件を満たしたと説明できません。

紙運用の様式を事前に印刷して保管しておくと、訓練も本番も動きが速くなります。私たちのグループでは、紙の問診票と処方箋の様式を各院の決まった場所に常備しています。


ベンダーへの確認事項

要件の多くはシステム側の対応に依存します。自院で判断せず、ベンダーに文書で回答をもらってください。

確認リスト

# 質問
1 電子的診療情報連携体制整備加算の要件に対応済みですか
2 御社の製品は厚生労働省の認証を受けた電子カルテ製品ですか
3 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに準拠していますか(準拠バージョンも)
4 電子処方箋管理サービスへの接続インターフェースがありますか
5 電子カルテ情報共有サービスへの接続インターフェースがありますか
6 対応に必要な改修費用と期間はどれくらいですか
7 改修後、レセプトコンピュータの加算マスタは自動更新されますか
8 再診時2点の算定設定は入っていますか
9 バックアップは何世代・どの媒体に取得していますか
10 オフラインバックアップの運用手順を提供できますか

7番と8番は必ず確認してください。 マスタが更新されていないと、要件を満たしていても算定できません。再診2点の設定漏れは特に起きやすい部分です。

回答はメールなど文書で受け取り、保管してください。指導時の説明材料になります。


補助金・支援制度の活用

医療DX関連の設備投資には、時期によって補助金や支援制度が用意されます。制度は年度で変わるため、着手前に必ず最新情報を確認してください。

確認すべき窓口を挙げます。

窓口 確認内容
医療機関等向け総合ポータルサイト 国の医療DX関連支援の案内
都道府県の医療政策担当課 都道府県独自の補助制度
市区町村 自治体独自の上乗せ補助
医師会・歯科医師会 会員向けの共同購入・斡旋
導入予定のベンダー 補助金申請の代行・書類支援の有無

ベンダーが申請書類の作成を支援してくれる場合があります。見積もり依頼時に確認してください。

補助金は交付決定前に発注すると対象外になる制度が多くあります。契約のタイミングに注意してください。


指導・監査で確認される点

届出後に個別指導が入った場合、掲示・公表・利用率の根拠・研修記録が確認対象になります。

準備しておく書類を整理します。

項目 用意する資料
院内掲示 掲示物の実物または写真(掲示日がわかるもの)
ウェブ公表 該当ページの印刷またはスクリーンショット(URL入り)
マイナ保険証利用率 総合ポータルサイトの画面(対象月の数値)
明細書無償交付 交付運用の手順書、患者への案内
オンライン請求 請求実績
電子処方箋 発行実績、HPKIカードの写し
電子カルテ情報共有サービス 運用開始日の登録画面
職員研修(入院加算) 研修の実施記録、受講者名簿、資料
BCP(入院加算) 計画書、訓練記録、改善記録

掲示物の写真は、掲示を開始した時点で撮っておいてください。 後から「いつから掲示していたか」を証明するのは困難です。


他の医療DX関連の評価との関係

2026年度改定では、外来以外にも医療DXに関する評価が整理されています。自院に該当するものを確認してください。

領域 確認すべき点
在宅医療 在宅患者に対する情報連携の評価の有無
訪問看護 訪問看護ステーション向けの医療DX関連加算
調剤 薬局側の電子処方箋・情報連携に関する評価
診療録管理体制加算 サイバーセキュリティ対策要件が見直された
歯科 歯科固有の点数設定

診療録管理体制加算については、今回の改定でサイバーセキュリティ対策の要件が見直されています。入院料加算とあわせて確認してください。

在宅・訪問看護・調剤の詳細な要件は、それぞれの告示・通知で確認が必要です。管轄の厚生局にご相談ください。


今日から届出までの30日計画

届出までの5段階のスケジュールを表したタイムラインの図

要件がまったく整っていない状態からでも、加算3であれば1か月以内に届出まで到達できます。

日程 実施内容 担当
1日目 総合ポータルサイトでマイナ保険証利用率を確認 事務長
1日目 3か月前・4か月前・5か月前の3つを比較し、最高値を特定 事務長
2日目 30%以上なら届出準備へ。未達なら利用率向上策を開始 事務長
3日目 オンライン請求・明細書無償交付の運用を確認 医療事務
5日目 院内掲示文を作成(本記事のテンプレートを利用) 事務長
7日目 掲示物を印刷し、受付・待合室に掲示。写真を記録 受付
7日目 掲示日を記録に残す 事務長
10日目 ウェブサイトに公表ページを作成 制作会社
12日目 公表ページを公開。URLとスクリーンショットを保管 事務長
14日目 マイナポータル情報にもとづく相談対応体制を院内で確認 院長
15日目 管轄の地方厚生(支)局のサイトから最新様式を取得 事務長
17日目 届出書を作成。区分は加算3で記載 事務長
18日目 院長が内容を確認・押印 院長
20日目 地方厚生(支)局へ提出(電子申請・郵送・持参) 事務長
20日目 レセコンの加算マスタ設定をベンダーへ依頼 事務長
22日目 再診2点の算定設定を確認 医療事務
25日目 受理状況を確認 事務長
30日目 算定開始。初月のレセプトで算定漏れを点検 医療事務

利用率が未達の場合は、2日目から「利用率が30%に届かないときの実務策」の内容に着手してください。3か月分のレセプトを積む必要があるため、着手が早いほど届出も早まります。

並行して進める中期計画

時期 内容
1〜2か月目 HPKIカードを申請(医師全員分)
2〜3か月目 電子処方箋の対応可否をベンダーと確認、見積取得
3〜4か月目 補助金の申請可否を確認(交付決定前の発注に注意)
4〜5か月目 電子処方箋のシステム改修・運用テスト
5〜6か月目 加算2へ区分変更の届出
6〜9か月目 電子カルテ情報共有サービスへの対応
9〜10か月目 運用開始日を総合ポータルサイトへ登録
10か月目 加算1へ区分変更の届出

加算3から加算1まで、およそ10か月の行程です。年間約39万円の差額を考えれば、着手する価値があります。


マイナ保険証を持たない患者への対応

マイナ保険証を持たない患者、持っているが使わない患者への対応を決めておかないと、受付が混乱し利用率も伸びません。

2024年12月に従来の健康保険証の新規発行が終了し、患者の持ち物は次の3パターンに分かれています。

患者の持ち物 対応
マイナ保険証(利用登録済み) カードリーダーで資格確認。利用率の分子に計上
マイナンバーカード(保険証利用の登録なし) その場で登録できる。案内すれば分子に計上できる
資格確認書 従来の保険証と同様に扱う。分子には計上されない
有効期限内の従来の健康保険証 期限まで使える。分子には計上されない

2行目が利用率を伸ばす余地です。マイナンバーカードは持っているが保険証利用の登録をしていない患者は一定数います。受付のカードリーダーから、その場で登録できます。

受付での案内スクリプト

登録を促す声かけの例です。

(マイナンバーカードを提示された場合)

「マイナンバーカードをお持ちですね。
 保険証としてのご登録がまだのようです。
 この機械で1分ほどで登録できます。
 登録されると、お薬や健診の情報を
 医師が確認できるようになります。
 いかがですか?」

「登録しますか」と聞くだけでは断られます。所要時間と利点を先に伝えると応じてもらいやすくなります。

断られたときの対応

無理に勧めないでください。資格確認書や有効期限内の保険証で通常どおり資格確認を行います。加算のために患者との関係を損ねるのは本末転倒です。

一度断られても、次回また案内して構いません。周囲で使う人が増えると心理的な抵抗は下がります。


電子処方箋の患者対応

電子処方箋を導入すると、受付・診察後の説明が変わります。事前にスクリプトを決めておかないと、診察後の待ち時間が伸びます。

患者が戸惑う3つの場面

場面 患者の疑問 説明のポイント
会計時 「紙の処方箋はもらえないのですか」 引換番号の控えを渡し、薬局で提示すれば受け取れると伝える
薬局選択 「どの薬局でも使えますか」 電子処方箋に対応した薬局であれば使えると伝える
家族が受け取る 「家族が代わりに行けますか」 引換番号を家族に渡せば受け取れると伝える

説明用の案内文

会計時に渡す紙の文面例です。

【電子処方箋のご案内】

本日のお薬の処方は、電子処方箋で発行しました。

■ 薬局での受け取り方
 下記の「引換番号」を薬局の窓口でお伝えください。
 マイナ保険証をお持ちの場合は、番号なしでも受け取れます。

 引換番号:          

■ ご注意
 ・電子処方箋に対応した薬局でご利用ください
 ・番号の有効期限は発行日を含めて4日間です
 ・ご家族が代わりに受け取ることもできます

ご不明な点は当院までお問い合わせください。
○○クリニック TEL:XX-XXXX-XXXX

有効期限は処方箋の一般的な取り扱いに合わせています。運用にあわせて調整してください。


担当者を誰にするか

医療DXの対応は、院長が片手間で進められる量ではありません。事務長または医療事務の中から担当者を1名決めてください。

私たちのグループでも、担当者を決めた院と決めなかった院で、届出までの期間が明確に違いました。

役割分担の例

役割 担当 主な業務
統括 院長 投資判断、届出書の最終確認
実務推進 事務長 利用率の確認・記録、届出書作成、ベンダー折衝
受付運用 受付リーダー 声かけの標準化、スタッフ教育
算定確認 医療事務 レセコン設定、算定漏れの点検
情報システム 事務長または外部委託 バックアップ運用、セキュリティ対策

1人体制の診療所では、院長が統括と実務推進を兼ねることになります。その場合、外部の支援を使って作業量を圧縮する判断も現実的です。

月次で確認すること

担当者が毎月確認する項目を固定してください。

頻度 確認内容
毎月 マイナ保険証利用率(総合ポータルサイト)
毎月 加算の算定件数(初診・再診それぞれ)
毎月 算定漏れの有無
四半期 掲示物・ウェブ公表の内容が最新か
半年 バックアップの復元テスト
年1回 職員研修、BCP訓練

利用率は毎月確認してください。 基準を割ると加算の届出要件を満たさなくなります。下がり始めた段階で気づけば、声かけの立て直しが間に合います。


職員研修のプログラム例

入院料加算では年1回以上の職員研修が要件です。外来のみの医療機関でも、受付の対応品質を揃えるために実施する価値があります。

60分で実施できる構成を示します。

時間 内容
0〜10分 医療機関を狙ったサイバー攻撃の実例共有
10〜20分 不審なメール・添付ファイルの見分け方
20〜30分 パスワード管理と持ち出し端末のルール確認
30〜40分 電子カルテが使えなくなった場合の紙運用手順
40〜50分 マイナ保険証の案内スクリプトの読み合わせ
50〜60分 質疑応答、理解度チェック

30〜40分の紙運用手順は、BCP訓練と兼ねられます。実際に紙の問診票を配って書いてみると、記入項目の不足に気づきます。

研修後は受講者名簿・使用資料・実施日を保管してください。これが記録になります。


制度の今後をどう見るか

評価軸は「体制を整えたか」から「実際に連携したか」へ移りつつあります。実績を問う要件は今後さらに増えると見ておくべきです。

過去2回の動きから読み取れる方向性を整理します。

局面 評価されたもの
2024年6月 オンライン資格確認の導入という「体制」
2025年4月 マイナ保険証利用率という「実績」
2026年6月 電子処方箋・情報共有サービスへの対応と、セキュリティ対策
今後(予測) 情報連携の実施件数など、より具体的な「実績」

体制を整えただけでは評価されなくなる流れです。導入したシステムを日常的に使う運用まで作り込んでおくと、次回改定への備えになります。

これは予測であり、確定した情報ではありません。次回改定の内容は中央社会保険医療協議会の議論を追ってください。


上位区分へ変更するときの届出

加算3から加算2、加算2から加算1への変更も、そのつど届出が必要です。要件を満たした月にすぐ提出してください。

区分変更は自動では反映されません。

変更届出の流れ

内容
1 上位区分の要件を満たしたことを確認(電子処方箋の運用開始日など)
2 掲示物・ウェブ公表の内容を新しい対応状況に更新
3 変更後の区分で届出書を作成
4 管轄の地方厚生(支)局へ提出
5 受理後、新しい区分で算定開始

2番を忘れないでください。電子処方箋に対応したのに掲示が古いままだと、要件と掲示内容が食い違います。

下位区分に落ちる場合

マイナ保険証利用率が基準を割った場合や、要件を満たせなくなった場合も届出が必要です。要件を満たさないまま算定を続けると、返還の対象になります。

利用率を毎月確認する理由はここにあります。基準を割ったことに気づかず算定を続けた期間が長いほど、返還額は大きくなります。


分院・複数拠点がある場合

届出は医療機関ごと(保険医療機関の指定単位ごと)に行います。本院で届出しても、分院には適用されません。

私たちのグループは11院あるため、この点で最初につまずきました。

項目 扱い
届出 拠点ごとに個別に提出
マイナ保険証利用率 拠点ごとに算出。合算しない
院内掲示 拠点ごとに掲示
ウェブ公表 拠点ごとの対応状況を明記
区分 拠点ごとに異なってよい

ウェブサイトを1つに統合している医療法人では、拠点ごとの対応状況を分けて書いてください。 「当法人は電子処方箋に対応しています」という書き方では、未対応の拠点について誤った情報になります。

拠点ごとに区分が違うのは問題ありません。A院が加算1、B院が加算3という状態で構いません。


開業予定の場合の進め方

開業時点で加算3を届出できる状態にしておくと、初月から算定できます。ただしマイナ保険証利用率の要件があるため、実際の算定開始は数か月後になります。

新規開業では利用率の実績がありません。

時期 対応
開業準備 オンライン資格確認・オンライン請求の環境を整備
開業時 明細書の無償交付を運用に組み込む。掲示・公表を用意
開業1〜3か月 レセプト実績を積む。受付での声かけを徹底
開業4か月目以降 3か月前の利用率が30%以上なら届出

開業当初から声かけを徹底してください。 患者の来院習慣が固まる前のほうが、マイナ保険証利用を定着させやすくなります。開業後に受付フローを変えるのは、はるかに手間がかかります。

電子処方箋とHPKIカードは、開業準備の段階から申請を始めてください。開業してから申請すると、数か月は加算3に留まります。


用語集

用語 意味
電子的診療情報連携体制整備加算 2026年6月新設。旧医療DX推進体制整備加算等の後継
医療DX推進体制整備加算 2024年6月〜2026年5月に存在した加算
医療情報取得加算 患者の医療情報の取得・活用を評価した加算。2026年5月廃止
オンライン資格確認 保険資格をオンラインで確認する仕組み
マイナ保険証 マイナンバーカードを健康保険証として利用すること
電子処方箋 処方箋を電子的に発行・共有する仕組み
電子カルテ情報共有サービス 医療機関間で診療情報を共有する全国的な仕組み
HPKIカード 医師・歯科医師等の資格を電子的に証明するカード
BCP 業務継続計画。災害・システム障害時の事業継続手順
地方厚生(支)局 診療報酬の届出先となる国の出先機関
総合ポータルサイト 医療機関等向け総合ポータルサイト。利用率確認・各種登録に使う

医療DX推進体制整備加算に関するよくある質問

医療DX推進体制整備加算はまだ算定できますか?

算定できません。2026年5月31日をもって廃止されました。2026年6月1日以降は、後継の「電子的診療情報連携体制整備加算」を届出のうえ算定してください。

旧加算を届出していれば、新加算も自動で算定できますか?

できません。旧加算は廃止、新加算は新設という扱いのため、あらためて地方厚生(支)局への届出が必要です。届出をしていない期間は算定できず、遡っての算定もできません。

今から届出しても間に合いますか?

間に合います。届出が受理されればその後の診療分から算定できます。要件整備に時間がかかる場合は、まず加算3で届出して算定を開始し、後から上位区分へ変更してください。

マイナ保険証利用率は何を分母に計算しますか?

総レセプト件数です。来院患者数ではありません。算定月の3か月前の数値が原則で、届かない場合は4か月前・5か月前の数値も使えます。3つのうち最も高い月を選べます。

電子処方箋がなくても加算は取れますか?

取れます。加算3(4点)は電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスの要件がありません。共通の施設基準を満たせば算定できます。

院内掲示だけで要件を満たしますか?

満たしません。院内掲示に加えて、原則として自院ウェブサイトでの公表が必要です。ウェブサイトを持たない場合を除き、掲載してください。

再診でも算定できますか?

できます。初診料の加算1〜3のいずれかを届出していれば、再診料・外来診療料に月1回2点を算定できます。追加の施設基準はありません。算定漏れが起きやすい項目です。

HPKIカードが間に合わない場合はどうなりますか?

取得を待っている期間について、一定の条件下で要件を満たすとみなす経過措置が設けられています。適用の可否は管轄の地方厚生(支)局に確認してください。

入院料加算のバックアップ要件は具体的に何が必要ですか?

複数方式でのバックアップ確保、そのうち一部をネットワークから切り離したオフライン保管、日次バックアップの3世代以上の確保が求められます。あわせてBCPの策定と年1回以上の訓練、訓練結果にもとづく改善が必要です。

加算を取ると年間でどれくらい増収しますか?

初診患者が月300人・再診の月内初回が月800人の診療所であれば、加算1で年間約73万円、加算2で約52万円、加算3で約34万円が目安です。自院の患者数に置き換えて計算してください。

分院がある場合、本院の届出で分院も算定できますか?

できません。届出は保険医療機関の指定単位ごとに行います。分院はそれぞれ個別に届出してください。マイナ保険証利用率も拠点ごとに算出し、合算はできません。拠点ごとに区分が異なっても問題ありません。

加算3から加算1に上げるときも届出が必要ですか?

必要です。区分変更は自動では反映されません。上位区分の要件を満たしたら、掲示物とウェブ公表の内容を更新してから、変更後の区分で届出してください。

マイナ保険証利用率が30%を割ったらどうなりますか?

要件を満たさなくなるため、届出の変更が必要です。要件を満たさないまま算定を続けると返還の対象になります。利用率は毎月確認し、下がり始めた段階で受付での声かけを立て直してください。

新規開業でも算定できますか?

できます。ただしマイナ保険証利用率は過去のレセプト実績にもとづくため、開業直後は算定できません。開業から3〜4か月分の実績を積み、3か月前の利用率が30%以上になった時点で届出してください。開業当初から受付での声かけを徹底すると、算定開始が早まります。

マイナンバーカードを持っているが保険証登録をしていない患者はどう扱いますか?

受付のカードリーダーでその場で登録できます。登録すればマイナ保険証の利用として利用率の分子に計上されます。所要時間と患者側の利点を先に伝えると応じてもらいやすくなります。断られた場合は無理に勧めず、資格確認書等で通常どおり対応してください。


まとめ

要点を整理します。

論点 結論
旧加算の状況 医療DX推進体制整備加算は2026年5月31日で廃止
後継 電子的診療情報連携体制整備加算(2026年6月1日新設)
点数 初診 加算1=15点/加算2=9点/加算3=4点、再診2点(月1回)、入院 加算1=160点/加算2=80点
自動移行 されない。新規届出が必須。遡及算定も不可
最大の関門 マイナ保険証利用率30%以上(分母は総レセプト件数)
区分を分けるもの 電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスへの対応
進め方 まず加算3で届出して算定を開始し、後から上位区分へ変更
見落としやすい点 ウェブサイトへの公表、再診2点の算定

届出を出していない医療機関は、要件がすべて揃うのを待たないでください。加算3で算定を始めながら整備を進めるほうが、結果として得られる額は大きくなります。

株式会社HUMEDITは、グループ11院・多科目の運営で培った知見をもとに、医療機関のシステム導入からウェブサイトの制度対応・集患支援までを一貫してご支援しています。届出に必要な公表ページの整備からご相談ください。


参考・出典

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