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母親から遺伝するものはミトコンドリアDNA|母系遺伝を解説

母親からしか受け継がないミトコンドリアDNAと母系遺伝を表したイラスト

この記事でわかること

  • 母親から遺伝するものの正体がミトコンドリアDNAであること
  • ミトコンドリアDNAと、父母双方から受け継ぐ核DNAの違い
  • なぜ母親からしか遺伝しないのか、その仕組み
  • 母系のルーツや家系をたどるDNA鑑定への活かし方
  • ミトコンドリア病との関わりと、注意しておきたい点

子どもは両親からDNAを半分ずつ受け継ぎます。ところが、それだけではありません。母親から遺伝するものの代表が「ミトコンドリアDNA」です。父親の分は受け継ぎません。この記事では、母系遺伝するミトコンドリアDNAと、父母双方から受け継ぐ核DNAの違いを、はじめての方にもわかるように整理します。

母親から遺伝するものは「ミトコンドリアDNA」

母親からしか遺伝しないのは、細胞のミトコンドリアがもつ「ミトコンドリアDNA」です。核の中にあるDNAは、父と母の両方から受け継ぎます。しかしミトコンドリアDNAだけは、母方の系統をたどって伝わります。

私たちのDNAは、大きく2種類に分けられます。ひとつは核の中にある核DNA。もうひとつが、ミトコンドリアの中にあるミトコンドリアDNAです。

核DNAは、両親から半分ずつ受け継ぐDNAです。髪の色や体格など、たくさんの特徴に関わります。父方の祖父母、母方の祖父母、双方のDNAが混ざり合って伝わるイメージです。

一方でミトコンドリアDNAは、母親からまっすぐ子へ伝わります。父親のミトコンドリアDNAは、子どもには残りません。ここが核DNAとの大きな違いです。

2つのDNAは、担う役割も分かれています。核DNAには、髪や肌、背の高さといった体の設計図が幅広く書き込まれています。ミトコンドリアDNAが受けもつのは、エネルギーづくりに関わる一部の情報です。

「自分のDNAは全部、両親から半分ずつ」と思っていた方も多いはずです。私も初めて知ったとき、母だけから伝わるDNAがあることに素直に驚きました。核DNAや染色体の成り立ちは、ヒトの染色体の数や形態についてで詳しく整理しています。

ミトコンドリアDNAと核DNAの違いを整理

2つのDNAは、存在する場所・形・遺伝のしかた・数のすべてが違います。まずは全体像を一覧で確認しましょう。細かい話は、このあと項目ごとに見ていきます。

項目ミトコンドリアDNA核DNA
ある場所ミトコンドリア(細胞質)核の中
環状の2本鎖直鎖状(染色体)
大きさ約1万6500塩基対約30億塩基対(1セット)
遺伝子の数37個約2万個
遺伝のしかた母親から(母系遺伝)父と母の両方から
1細胞あたりの数数百〜数千コピー基本は2セット

存在する場所が違う

核DNAは核の中に、ミトコンドリアDNAはミトコンドリアの中にあります。どちらも、同じ細胞の中の別々の場所です。

ミトコンドリアは、酸素を使ってエネルギーを生み出す小さな器官。ひとつの細胞の中に、たくさんのミトコンドリアが入っています。だからミトコンドリアDNAも、1つの細胞にたくさん存在します。

核はひとつの細胞に1個だけ。そこに核DNAが収められています。細胞を工場にたとえるなら、核は設計図をしまった本部、ミトコンドリアは電気を起こす発電室。役割の違う部屋に、それぞれ別のDNAが置かれているイメージです。

細胞の中にある核DNAとミトコンドリアDNAの位置を示した図

形と大きさが違う

ミトコンドリアDNAは環状、核DNAは直鎖状です。DNAの形そのものが異なります。

ミトコンドリアDNAは、輪のようにつながった2本鎖です。核DNAは、まっすぐ伸びた2本鎖で、折りたたまれて染色体という形になります。

長さも大きく違います。ミトコンドリアDNAは約1万6500塩基対で、37個の遺伝子をもちます。これに対して核DNAは、1セットで約30億塩基対にもなり、約2万個の遺伝子を含みます。

環状のミトコンドリアDNAと直鎖状の核DNAを比べた図

塩基対とは、DNAの長さを示す単位

塩基対は、DNAの長さをあらわす単位です。数字の意味がわかると、大きさの差がつかみやすくなります。

DNAは、A・T・G・Cという4種類の塩基でできています。この塩基がAとT、GとCという決まった組み合わせで対になり、二重らせんの形をつくります。対になった塩基のセットを、塩基対と呼びます。

たとえばA・T・G・C・Aと5つ並んだDNAなら、5塩基対です。この積み重ねが、ミトコンドリアDNAで約1万6500、核DNAで約30億にまで達します。

A・T・G・Cの塩基が対になった二重らせんDNAの図

1細胞あたりの数が違う

核DNAは基本的に2セット、ミトコンドリアDNAは数百から数千コピーあります。ここも大きな差です。

核DNAは、父由来と母由来の1セットずつ。合わせて2セットが基本です。ミトコンドリアDNAは、ミトコンドリアが細胞の中で分裂して増えるため、数がとても多くなります。

なぜミトコンドリアDNAは母親からしか遺伝しないのか

受精のとき、父由来のミトコンドリアがほぼ取り除かれるからです。そのため子どもは、母の卵子がもつミトコンドリアDNAを受け継ぎます。

受精は、精子が卵子の中へ入ることで起こります。精子にも卵子にも、ミトコンドリアはあります。ところが受精のあと、精子由来のミトコンドリアは分解され、消えていきます。

結果として、子どものミトコンドリアDNAは母方だけ。父方は伝わりません。この仕組みが、母系遺伝と呼ばれる理由です。

この母系遺伝という性質が、あとで紹介するルーツ調査や鑑定に活きてきます。母から子へ、途中で父方が混ざらずに伝わるからこそ、何世代も前まで一本の線としてたどれるからです。

なお、父由来のミトコンドリアがなぜ排除されるのか、その詳しい理由はまだ解明の途中です。ごくまれに父由来のミトコンドリアDNAが伝わったとする報告もありますが、あくまで例外的な事例。基本は母系遺伝と理解して差し支えありません。

母系のルーツと家系をたどれる

ミトコンドリアDNAは、母方祖母から母、母から子へとまっすぐ受け継がれます。だから、母方のルーツをたどる手がかりになります。

あなたのミトコンドリアDNAは、母から受け継いだもの。その母のミトコンドリアDNAは、母方の祖母から受け継いだもの。この連なりが、何世代も前までさかのぼります。

兄弟姉妹は、同じ母から生まれれば同じミトコンドリアDNAをもちます。母方でつながるいとこ同士でも一致します。母系の家系図を、DNAで確かめられるわけです。

戸籍や苗字は、多くの場合、父系をたどる記録として残ります。母方の古い世代は、書類だけでは追いにくいことも少なくありません。ミトコンドリアDNAは、その空白を埋めるもうひとつの記録として役立ちます。

研究の世界では、全人類の母系をずっとたどると、1人の女性に行き着くとされます。この女性はミトコンドリア・イブと呼ばれ、父系をたどるY染色体の話と対になる考え方。遺伝のしくみを研究する国立遺伝学研究所でも、こうした遺伝の基礎が発信されています。

私は家系図を調べるのが趣味で、戸籍だけでは母方の古い世代までたどりきれず、もどかしい思いをした経験があります。ミトコンドリアDNAという「もうひとつの記録」があると知り、DNAが家族の歴史を語る手がかりになると実感しました。父系側はY染色体アダムとあわせて読むと、父系と母系の違いがよくわかります。

ミトコンドリアDNAと「ミトコンドリア病」の関わり

ミトコンドリアDNAの変化は、母系で受け継がれることがある「ミトコンドリア病」に関わることがあります。ただし、すべてが遺伝だけで決まるわけではありません。

ミトコンドリアは、体のエネルギーを生み出す器官です。その働きが弱まると、脳・心臓・筋肉など、エネルギーを多く使う場所に影響が出ることがあります。こうした状態をまとめて、ミトコンドリア病と呼びます。

あらわれ方は、人によってさまざまです。目や耳の働き、心臓の力、体を動かす力など、症状が出る場所は一人ひとり異なります。同じ名前の病気でも、経過が大きく違うのはこのためです。

ミトコンドリア病は、国の指定難病21に定められています。原因は、ミトコンドリアDNAの変化のこともあれば、核DNAの変化のこともあります。母系で受け継がれるタイプもあり、原因や症状、経過は人によって大きく異なります。

同じミトコンドリアDNAの変化があっても、症状の重さは一律ではありません。細胞ごとに、変化したミトコンドリアDNAと正常なものが混ざり合う割合が異なるためだと考えられています。だからこそ、遺伝の有無だけで先を決めつけない姿勢が求められます。

詳しい症状や治療については、専門機関の情報が確かです。難病情報センター「ミトコンドリア病(指定難病21)」で最新の解説を確認できます。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関へ相談してください。出生前にわかる染色体の病気については、トリソミーとは?出生前診断でわかる染色体の病気でも紹介しています。

遺伝子検査・DNA鑑定でのミトコンドリアDNAの活かし方

ミトコンドリアDNAは、母系をたどるDNA鑑定やルーツ調査に活用できます。母だけから伝わる性質が、そのまま鑑定の強みになります。

たとえば、母方の血縁を確かめたいとき。ミトコンドリアDNAが一致すれば、母方でつながっている可能性を示せます。祖母・母・孫といった女系のつながりを確認したい場面に向いています。

たとえば、離れて暮らす親戚と本当に母方でつながっているのか確かめたい、といった相談があります。こうした母系のつながりの確認では、ミトコンドリアDNAが手がかりになります。歴史上の人物との血縁を調べる研究でも、同じ考え方が使われてきました。

父子関係や兄弟関係の鑑定では、主に核DNAを使います。目的によって、使うDNAを選び分けるわけです。どのDNAで何がわかるかを知れば、必要な検査を自分で選べるようになります。

鑑定では、口の内側の粘膜や髪の毛などから細胞を採り、DNAを調べます。ミトコンドリアDNAは1つの細胞に数多くあるため、少ない試料でも解析しやすいという利点があります。何を調べたいかが決まれば、必要な試料や進め方も見えてきます。

私たちHUMEDITは、板橋衛生検査所を自社で運営し、遺伝子検査やDNA鑑定を手がけています。母系鑑定を含め、どの検査が目的に合うか迷ったら、まずは気軽にご相談ください。事業の詳細は遺伝子検査事業のページにまとめています。

よくある質問(FAQ)

母親から遺伝するものや、ミトコンドリアDNAについて、よくいただく質問をまとめます。気になる項目から読み進めてください。

母親からしか遺伝しないものは何ですか?

ミトコンドリアDNAです。核DNAは父と母の両方から受け継ぎますが、ミトコンドリアDNAは母親からだけ子へ伝わります。これを母系遺伝と呼びます。

父親のミトコンドリアDNAは子に伝わらないのですか?

基本的に伝わりません。受精のとき、精子由来のミトコンドリアが分解されるためです。ごくまれに例外的な報告もありますが、通常は母系遺伝と理解して問題ありません。

ミトコンドリアDNAで母方の家系はどこまでたどれますか?

母方の女系をたどれます。母から母方祖母、さらに母方曾祖母へと、何世代も前までさかのぼる手がかりになります。兄弟姉妹や母方のいとこ同士でも一致します。

ミトコンドリアDNAと核DNAはどちらが大きいですか?

核DNAです。核DNAは1セットで約30億塩基対あり、ミトコンドリアDNAの約1万6500塩基対と比べてはるかに大きい構造です。

ミトコンドリア病は必ず母親から遺伝しますか?

必ずではありません。母系で受け継がれるタイプもあれば、核DNAの変化が原因となるタイプもあります。原因や経過は人により大きく異なるため、気になるときは医療機関へ相談してください。

母系のDNA鑑定はどこに相談できますか?

遺伝子検査やDNA鑑定を扱う検査機関に相談できます。HUMEDITでも母系鑑定を含め、目的に合う検査のご相談を承っています。

母親から遺伝するものの正体、それはミトコンドリアDNAでした。核DNAとの違いや母系遺伝の仕組みを知ると、DNA鑑定の選び方も見えてきます。母系のルーツ確認やDNA鑑定に関心があれば、下のボタンからお気軽にお問い合わせください。

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