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副甲状腺腫瘍と遺伝子|MEN1やCDC73を解説

この記事でわかること

  • 副甲状腺腫瘍の多くは良性で、遺伝と無関係な散発例が中心だということ
  • 遺伝が関わる場合に押さえたいMEN1・CDC73・CASRなどの遺伝子の役割
  • 原発性副甲状腺機能亢進症と遺伝性タイプの見分け方
  • 遺伝子検査と遺伝カウンセリングを進めるときの流れ
  • 治療や経過観察で専門医に相談したいポイント

先に結論をお伝えします。副甲状腺腫瘍の多くは良性の散発例ですが、一部にMEN1やCDC73などの遺伝子が関わる遺伝性タイプがあります。ここを取り違えると、不安だけが先に立ってしまいます。

この記事では「副甲状腺腫瘍 遺伝子」というテーマを、正確さ最優先で整理します。良性か遺伝性かを見分ける考え方から、関わる遺伝子、検査の進め方までを順に解説します。医療情報として、断定を避けつつ客観的にまとめました。

副甲状腺腫瘍と遺伝子の関係とは

副甲状腺腫瘍と遺伝子の関係は、「大半は遺伝と無関係、一部だけ遺伝性」という理解が出発点になります。まずは全体像を押さえましょう。

副甲状腺は、首の甲状腺の裏側にある米粒ほどの臓器です。通常は4つあり、血液中のカルシウム濃度を調整するホルモンを出しています。ここに腫瘍ができると、ホルモンの分泌バランスが崩れます。

副甲状腺腫瘍は、大きく3つに分けられます。それぞれ性質が異なります。

種類性質特徴
腺腫(せんしゅ)良性最も多い。1つの腺が腫れることが中心
過形成(かけいせい)良性複数の腺が大きくなる。遺伝性で目立ちやすい
副甲状腺がん悪性ごくまれ。全体に占める割合は小さい

この表からわかるとおり、多くは良性の腺腫です。副甲状腺がんはごくまれで、頻度は高くありません。私が検査データを見ていても、悪性より良性の相談のほうが圧倒的に多いという印象を持っています。

多くは良性・散発性という前提

副甲状腺腫瘍の大部分は、遺伝と関係なく単発で起こる散発例です。特定の遺伝子を親から受け継いだ結果ではありません。加齢や偶発的な細胞の変化が背景にあると考えられています。

遺伝性が関わるのは全体の一部にとどまります。ただし、若くして発症した方や、家族に同じ病気が続く方では、遺伝性を念頭に置いた確認が役立ちます。次の章で、その遺伝子を見ていきましょう。

なぜ良性か遺伝性かを分けて考えるのでしょうか。理由は、その後の進め方が変わるからです。散発性の腺腫なら、原因の腺を取り除けば落ち着くことが多い病態です。一方、遺伝性なら家族の確認や長い経過観察が視野に入ります。同じ「副甲状腺の腫れ」でも、道筋がまったく違います。

副甲状腺腫瘍に関わる主な遺伝子

遺伝性の副甲状腺腫瘍には、MEN1・CDC73・CASRなど複数の遺伝子が関わります。それぞれ関連する病態が違います。まず一覧で全体像をつかんでください。

遺伝子関連する病態・症候群主な特徴
MEN1多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)副甲状腺・膵臓・下垂体に腫瘍。副甲状腺機能亢進症が高頻度
CDC73(HRPT2)副甲状腺機能亢進症・顎腫瘍症候群(HPT-JT)副甲状腺がんや顎骨の腫瘍と関連しやすい
CASR家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)多くは良性で、手術を要さないことが多い
RET多発性内分泌腫瘍症2A型(MEN2A)甲状腺髄様がん・褐色細胞腫を伴う
CDKN1B多発性内分泌腫瘍症4型(MEN4)MEN1に似た症状。まれなタイプ
GCM2家族性孤立性副甲状腺機能亢進症(FIHP)ほかの臓器の腫瘍を伴いにくい

ここからは、代表的な遺伝子を1つずつ解説します。名前が似ていて混同しやすいので、役割の違いに注目してください。

MEN1遺伝子(多発性内分泌腫瘍症1型)

MEN1遺伝子は、遺伝性の副甲状腺腫瘍で最もよく知られる遺伝子です。この遺伝子はがん抑制遺伝子で、細胞が増えすぎないよう調整します。ちょうどp53遺伝子と同じく、ブレーキ役を担う遺伝子です。

MEN1では、副甲状腺・膵臓・下垂体という3つの内分泌臓器に腫瘍ができやすくなります。なかでも副甲状腺機能亢進症は高い頻度でみられます。多くは常染色体顕性遺伝の形で受け継がれます。

ただし、MEN1遺伝子に変異があっても、すぐに全員が発症するわけではありません。症状の出方や時期には個人差があります。だからこそ、定期的な確認が力を発揮します。

CDC73/HRPT2遺伝子(HPT-JT・副甲状腺がん)

CDC73遺伝子は、副甲状腺がんと関わりが指摘される遺伝子です。HRPT2という別名でも呼ばれます。この遺伝子の変異は、副甲状腺機能亢進症・顎腫瘍症候群(HPT-JT)と関連します。

HPT-JTでは、副甲状腺の腫瘍に加え、顎の骨にできる腫瘍や腎臓の病変を伴うことがあります。散発性の副甲状腺がんでも、CDC73の変異がみつかることがあります。副甲状腺がん自体はごくまれですが、この遺伝子は注目されています。

CASR遺伝子(家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症)

CASR遺伝子は、カルシウムを感じ取るセンサーの設計図です。この遺伝子の変異で起こるのが、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)です。FHHは多くが良性で、手術を要さないことが多い病態です。

FHHは、血液検査で高カルシウム血症を示します。そのため原発性副甲状腺機能亢進症と間違われやすい病態です。手術の要否が変わるため、両者の見分けが実務ではとても大切な確認になります。

RET・CDKN1B・GCM2などその他の遺伝子

副甲状腺に関わる遺伝子は、ほかにもあります。役割はそれぞれ異なります。混同しやすい名前が並ぶので、ここで整理しておきましょう。

  • RET遺伝子:多発性内分泌腫瘍症2A型(MEN2A)に関わり、甲状腺がんのうち髄様がんや褐色細胞腫を伴います。がんを促す側の遺伝子です。
  • CDKN1B遺伝子:多発性内分泌腫瘍症4型(MEN4)に関わり、MEN1に似た症状を示すまれなタイプです。
  • GCM2遺伝子:家族性孤立性副甲状腺機能亢進症(FIHP)に関わり、副甲状腺以外の腫瘍を伴いにくいのが特徴です。

ここで一つ補足します。MEN1やCDC73はブレーキ役のがん抑制遺伝子ですが、RETはアクセルを踏むがん遺伝子です。方向が逆という違いを覚えておくと理解が進みます。こうした遺伝子は染色体の上に並んでいます。

原発性副甲状腺機能亢進症は遺伝するのか

原発性副甲状腺機能亢進症の多くは散発性で、遺伝とは無関係に起こります。まずこの前提を押さえてください。

原発性副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺ホルモンが過剰に出る状態です。腺腫や過形成が背景にあります。血液中のカルシウムが上がり、骨密度の低下や腎結石につながることがあります。

その大半は、遺伝と関係のない単発例です。一方で、一部は遺伝性です。遺伝性のときは、複数の腺が同時に腫れる過形成の形をとりやすい傾向があります。

取材やデータ整理のなかで私が感じるのは、「家族歴」という一言の手がかりが大きいという点です。血のつながった家族に同じ病気が続くとき、遺伝性を考える入り口になります。気になる方は主治医に家族歴を正直に伝えてください。

遺伝性を疑うサインと遺伝の仕組み

若い発症・複数腺の腫れ・家族歴が重なるときは、遺伝性を意識した確認が役立ちます。目安となるサインを整理します。

次のような特徴があると、遺伝性のタイプを考える手がかりになります。ただし1つ当てはまるだけで確定するものではありません。総合的に判断されます。

  • 比較的若い年齢で発症している
  • 複数の副甲状腺が同時に腫れている(過形成)
  • 血縁者に副甲状腺の病気や内分泌の腫瘍が続いている
  • 膵臓や下垂体など、ほかの内分泌臓器にも腫瘍がある

遺伝の仕組みにも触れておきます。ここまで挙げた遺伝子の多くは、常染色体顕性遺伝の形で受け継がれます。親から片方の変異を受け継ぐと、子に伝わりやすい形式です。

ここで強調したいことがあります。変異を受け継いでも、必ず発症するとは限りません。発症の有無や時期には個人差があります。だから遺伝子検査の結果は、専門家と一緒に読み解く必要があります。

検査・診断の流れと遺伝カウンセリング

診断は血液検査と画像検査を軸に進み、遺伝性が疑われるときは遺伝子検査と遺伝カウンセリングを組み合わせます。流れを順に見ていきましょう。

まず行う基本の検査

最初に行うのは、血液検査です。血中カルシウムと副甲状腺ホルモンの値を確認します。あわせて画像検査で、腫れている腺の位置や大きさを調べます。

画像検査では、超音波やシンチグラフィ、CT・MRIなどが使われます。どの検査を組み合わせるかは、症状や施設の方針で変わります。ここまでで、腫瘍の性質をおおまかに絞り込みます。

遺伝子検査と遺伝カウンセリング

遺伝性が疑われるときは、遺伝子検査が選択肢になります。MEN1やCDC73などの変異を調べます。検査の前後には、遺伝カウンセリングを受けてください。

遺伝カウンセリングでは、検査でわかること・わからないことを丁寧に説明します。結果が家族に与える意味も一緒に考えます。私自身、遺伝情報は数字だけで語れないと感じています。専門職の支えが心強い場面です。

私たちHUMEDITは、がん関連遺伝子の解析を通じて、医療機関の判断を支える情報提供に取り組んでいます。検査を受けるかどうかは、主治医や遺伝の専門家と相談して個別に決めてください。気になる点は、下記の窓口からお問い合わせください。

治療と経過観察の考え方

治療は腫瘍の性質と症状しだいで変わり、手術・薬物療法・経過観察を病態ごとに使い分けます。基本の考え方を整理します。

症状がはっきりした原発性副甲状腺機能亢進症では、手術で腫れた腺を取り除く方法がとられます。過形成で複数の腺が腫れているときは、切除の範囲も変わります。手術の要否は専門医が個別に判断します。

一方で、FHHのように良性で手術を要さない病態もあります。だからこそ、原発性副甲状腺機能亢進症との見分けが大切です。誤って手術に進まないための確認になります。

遺伝性のタイプでは、経過観察が中心になる場面もあります。時間をおいて別の腫瘍が出ることがあるからです。定期的な血液検査や画像検査で、変化を早めにとらえます。特定の治療が効くと断定はできませんので、主治医の説明に沿って進めてください。詳しい病気の解説は、国立がん研究センターの遺伝性腫瘍の解説難病情報センターも参考になります。

よくある質問(FAQ)

ここでは、副甲状腺腫瘍と遺伝子についてよく寄せられる質問に答えます。不安を整理する材料にしてください。

Q1. 副甲状腺腫瘍は必ず遺伝しますか?

いいえ、必ず遺伝するわけではありません。副甲状腺腫瘍の多くは遺伝と無関係な散発例です。遺伝が関わるのは一部にとどまります。家族歴がある方は主治医に伝えてください。

Q2. 遺伝子に変異があると必ず発症しますか?

変異があっても、必ず発症するとは限りません。発症の有無や時期には個人差があります。だからこそ、定期的な確認と専門家への相談が役立ちます。

Q3. 副甲状腺がんは多いのですか?

副甲状腺がんはごくまれです。副甲状腺腫瘍の多くは良性の腺腫です。まれにCDC73遺伝子との関連が指摘されますが、頻度は高くありません。過度に心配せず、まず主治医に相談してください。

Q4. どんなときに遺伝子検査を受けるべきですか?

若い発症・複数腺の過形成・家族歴などが重なるときが目安です。ほかの内分泌臓器にも腫瘍があるときも該当します。受けるかどうかは、遺伝カウンセリングを通じて個別に決めてください。

Q5. MEN1とMEN2はどう違いますか?

関わる遺伝子と腫瘍の出る臓器が異なります。MEN1はMEN1遺伝子が関わり、副甲状腺・膵臓・下垂体に腫瘍が出やすいタイプ。MEN2はRET遺伝子が関わり、甲状腺髄様がんや褐色細胞腫を伴います。名前は似ていますが別の病気です。

Q6. 家族が診断されたら私も検査すべきですか?

家族の診断は、確認を考えるきっかけになります。ただし一律に検査が必要というわけではありません。まず遺伝カウンセリングで、自分に合う進め方を相談してください。

副甲状腺腫瘍と遺伝子について、気になる点が残った方は、専門家への相談が近道です。がん関連遺伝子の検査に関するご質問は、下記の窓口で受け付けています。

監修:岡 博史(おか ひろし)(ヒロクリニック統括院長/医学博士)

資格:日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会産業医/CAPラボディレクター/東京衛生検査所 指導監督医

所属:医療法人社団福美会 理事

略歴:1996年 慶應義塾大学医学部 卒業/2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得/2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手/2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業/2009年 医療法人社団福美会 理事長/2015年 医療法人社団福美会 理事

担当分野:皮膚疾患・皮膚外科・医療情報全般の監修統括

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