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ネオアンチゲンの作成方法|同定から製造までの流れ

この記事の概要

ネオアンチゲンの作成方法は、がん細胞特有の新しい抗原(ネオアンチゲン)を同定し、それを基に免疫治療やワクチンを設計するための一連のプロセスです。ネオアンチゲンは、正常な細胞には見られないがん細胞特有の変異から生じるタンパク質断片であり、免疫システムが「異物」として認識しやすいため、免疫療法の理想的な標的とされています。

ネオアンチゲンの作成方法と同定から製造までの流れ

この記事でわかること

  • ネオアンチゲンの作成方法の全体像(同定から製造、投与まで)
  • ①検体採取 ②NGSで体細胞変異を同定 ③HLA結合予測で候補選定 ④ペプチド・mRNA等の合成 ⑤研究・治験での投与、という一連の流れ
  • 予測や候補選定に不確実性がともない、実際の有効性とは別問題であること
  • 時間・コスト・個別製造という技術的な課題
  • ネオアンチゲンが研究・開発段階で、標準治療としては未確立であること
  • NGS(次世代シーケンシング)や遺伝子検査が担う役割

ネオアンチゲンの作成方法は、腫瘍と正常組織の検体採取から、NGSによる体細胞変異の同定、HLA結合予測による候補選定、ペプチドやmRNAなどの合成、研究・治験の枠組みでの投与へと続く、一連のワークフローです。各ステップは高度な解析にもとづき、予測の段階では不確実性がともないます。この記事では、その流れを段階ごとに整理し、あわせて技術的な課題も確認します。

私は遺伝子解析に関わる現場で、がんゲノムの話題に触れる機会があります。ネオアンチゲンという言葉は難しく響きますが、工程を一つずつたどれば全体像が見えてきます。まずは「作成方法とは何か」という枠組みから確認していきましょう。

ネオアンチゲンの作成方法とは|同定から製造までの一連のワークフロー

ネオアンチゲンの作成方法とは、患者ごとのがん変異を見つけ、免疫が認識しうる標的を選び、投与できる形に整えるまでの一連のワークフローを指します。単一の技術ではなく、複数の工程の組み合わせです。

ネオアンチゲンは、がん細胞に生じた変異から作られる、正常な細胞には見られない目印です。その基本的な性質は、ネオアンチゲンとは具体的にの記事で整理しています。ここでは「どう作るか」に焦点をあてます。

作成の流れは、大きく5つのステップに分けて考えると理解しやすくなります。下の表で全体像をつかんでください。あくまで一般的な整理であり、研究や治験ごとに手順の詳細は異なります。

ステップ主な内容目的
①検体採取腫瘍組織と正常組織(血液など)を採るがん特有の変異を比較で見つける準備
②変異の同定NGSでDNA・RNAを解析する体細胞変異を洗い出す
③候補の選定HLA結合予測などの解析を行う免疫が認識しうる候補を絞る
④合成・製造ペプチド・mRNA・DNAなどを作る投与できる形に整える
⑤投与・評価研究・治験の枠組みで投与する安全性や反応を確かめる
ネオアンチゲン作成の主要ステップ(一般的な整理)

私が現場で感じるのは、どの工程も単独では完結しないという点です。前の工程の精度が、次の工程の質を左右します。だからこそ、全体を通した設計が問われます。

ステップ①検体採取|腫瘍組織と正常組織を採る

最初のステップは、患者の腫瘍組織と、同じ患者の正常組織を採取することです。両方をそろえる点に意味があります。

腫瘍組織からは、がん細胞のDNAやRNAを得ます。正常組織は、血液などから採取するのが一般的です。二つを比べることで、がんにだけ生じた変化を見分けやすくなります。

なぜ比較が必要なのでしょうか。人はもともと個人差のある遺伝情報を持っています。正常組織を「ものさし」にすれば、生まれつきの違いと、がんで新たに生じた変異とを区別できます。この区別が、後の工程の土台になります。

採取した検体の質も、後の解析を左右します。組織の量が少なかったり、保存の状態が整っていなかったりすると、変異を正確に読み取りにくくなります。だからこそ、採取と保存の手順は丁寧に管理されます。地味に見えて、精度を支える工程です。

ステップ②NGSで体細胞変異を同定する

次のステップは、NGS(次世代シーケンシング)で腫瘍と正常組織の遺伝情報を読み取り、がん特有の体細胞変異を同定することです。ここが作成方法の心臓部にあたります。

体細胞変異とは、生まれつきではなく、がん細胞で後天的に生じた遺伝子の変化です。NGSは膨大な塩基配列を並行して読み取り、腫瘍と正常組織の差分から、この変異を洗い出します。挿入や欠失、コピー数の変化なども対象になります。

DNAの解析に加えて、RNAシーケンシング(RNA-Seq)を組み合わせることもあります。実際にがん細胞でどの遺伝子が働いているかを見て、標的になりうるタンパク質を絞り込むためです。NGSが作成方法の中で果たす役割は、ネオアンチゲン作成におけるNGSの役割でより詳しく解説しています。

読み取ったデータは、そのままでは意味を持ちません。解析パイプラインを通して、はじめて「候補となる変異のリスト」になります。膨大なデータを丁寧に扱う工程。

ステップ③HLA結合予測でネオアンチゲン候補を選ぶ

3つ目のステップは、見つかった変異から作られるペプチドが、患者のHLAに結合しやすいかを予測し、ネオアンチゲン候補を絞り込むことです。バイオインフォマティクスが主役になります。

変異した遺伝子からは、変異したペプチド(タンパク質の断片)が生まれます。このペプチドが免疫に認識されるには、まず主要組織適合性複合体(MHC、ヒトではHLAと呼ばれます)に結合し、細胞の表面に提示される必要があります。

そこで解析ツールを使い、どの変異ペプチドが患者固有のHLAに結合しやすいかをシミュレーションします。結合しやすいと予測されたものを、T細胞が認識しうる候補としてリスト化します。MHCにはクラスIとクラスIIがあり、それぞれ提示のしかたが異なります。

ここで注意したい点があります。予測はあくまで計算にもとづく見込みで、不確実性をともないます。結合が予測されても、体内で本当に強い免疫反応が起きるかどうかは別問題です。予測の精度は研究が進む領域であり、候補の絞り込みには限界が残ります。

ステップ④ペプチドやmRNAなどを合成・製造する

4つ目のステップは、選ばれたネオアンチゲン候補を、ペプチドやmRNAなど投与できる形に合成・製造することです。候補の情報を、実物へと変える工程です。

ネオアンチゲンペプチドを合成・製造するイメージ

製造の形式にはいくつかの種類があります。ペプチドを化学的に合成する方法のほか、変異をコードするmRNAやDNAを使う方法、抗原を提示する樹状細胞を用いる方法などです。下の表で、それぞれの概要を整理します。

形式概要一般的にいわれる特徴
ペプチド変異ペプチドを化学合成する比較的つくりやすいとされる
mRNA変異をコードするmRNAを投与する細胞内でタンパク質が作られる
DNA変異をコードするDNAを投与する安定性が高いとされる
樹状細胞抗原を提示する細胞を用いる免疫への提示に着目した方法
ネオアンチゲンを用いる主な形式(一般的な整理)

mRNAは、新型コロナウイルスのワクチンでも用いられた技術として知られるようになりました。ネオアンチゲンをワクチンの形で用いる考え方や、その仕組みと課題は、ネオアンチゲンワクチンとはの記事で詳しくまとめています。

製造では、患者ごとに異なる情報を、一つひとつ個別に作る必要があります。既製品をそろえるのとは、性質が違います。この個別製造という性質が、後述する課題にもつながります。

ステップ⑤研究・治験の枠組みで投与し評価する

最後のステップは、作成したネオアンチゲンを、研究や治験の枠組みのなかで投与し、安全性や免疫の反応を評価することです。ここは臨床の管理下で行われる領域です。

投与の前後では、患者のT細胞がネオアンチゲンを認識できるかを調べることがあります。血液からT細胞を取り出し、体外でペプチドと反応させ、特異的に反応する細胞を確認する方法などです。反応がみられた場合に、次の検討へ進みます。

ここで強調しておきたいことがあります。ネオアンチゲンを用いた治療は、多くが研究・開発段階にあり、標準治療として広く確立したものではありません。奏効率や効果を断定できる段階にはなく、有効性や安全性は治験を通して慎重に検証されています。実際の治療方針は、主治医や専門医が個別に判断します。がん免疫療法に関する一般的な情報は、国立がん研究センター がん情報サービス日本臨床腫瘍学会の情報も参考になります。

ネオアンチゲン作成の技術的課題|時間・コスト・個別製造

ネオアンチゲンの作成には、時間・コスト・個別製造という技術的な課題がともないます。期待とあわせて、現実の壁も知っておきたいところです。

まず、検体採取からNGS解析、候補選定、製造までには、高度な技術と一定の時間がかかります。患者ごとに個別に作るため、量産による効率化がしにくく、コストも上がりやすい傾向があります。下の表で主な課題を整理します。

課題内容
時間とコスト解析と個別製造に高度な工程が必要で、負担が大きくなりやすい
がんの異質性同じ患者でも部位や時期で変異が異なり、すべてを標的にしにくい
免疫回避がん細胞が免疫の攻撃を逃れる仕組みを持つことがある
予測の限界候補の予測が、体内での反応と一致するとは限らない
作成方法にともなう主な課題

がん細胞は、同じ患者の体内でも場所や時期によって変異が変わることがあります。そのため、すべてのがん細胞に共通する標的を一つに絞り込むのは簡単ではありません。免疫の攻撃を回避する仕組みも、克服すべき課題として研究が続いています。

遺伝子検査・ゲノム解析がネオアンチゲン研究で果たす役割

ネオアンチゲンの作成方法を支えているのは、体細胞変異を正確に読み取る遺伝子検査・ゲノム解析の技術です。解析の質が、候補選定の精度を左右します。

遺伝子検査そのものの基本、種類や目的については遺伝子検査とは|種類・目的・受け方を解説で整理しています。がんゲノムの領域では、NGSを用いた解析が土台となり、変異の同定から候補の絞り込みまでを下支えします。

私たちHUMEDITは、板橋衛生検査所を自社で運営し、各種検査や遺伝子解析に取り組んできました。がんゲノムやネオアンチゲンの研究は発展途上ですが、その基盤となる検査・解析の分野で、正確なデータを扱う姿勢を大切にしています。事業の概要は遺伝子検査事業のご案内でも紹介しています。

なお、この記事は一般的な情報の整理です。診断や治療、検査を受けるかどうかの判断は、目的や病状をふまえて医師・専門家に相談してください。遺伝子検査に関するご質問は、下のボタンからお気軽にどうぞ。

よくある質問(FAQ)

ネオアンチゲンの作成方法は、どのような流れですか?

大きく5つの流れで整理できます。腫瘍と正常組織の検体採取、NGSによる体細胞変異の同定、HLA結合予測による候補の選定、ペプチドやmRNAなどの合成・製造、そして研究・治験の枠組みでの投与と評価です。各工程は高度な解析にもとづき、研究や治験ごとに手順の詳細は異なります。

なぜ腫瘍だけでなく正常組織も採取するのですか?

がんに特有の変異を見分けるためです。人はもともと個人差のある遺伝情報を持つため、正常組織を比較の基準にすると、生まれつきの違いと、がんで後天的に生じた体細胞変異とを区別しやすくなります。この比較が、候補選定の土台になります。

HLA結合予測で選んだ候補は、必ず効果がありますか?

必ず効果があるとはいえません。結合予測は計算にもとづく見込みで、不確実性をともないます。結合が予測されても、体内で強い免疫反応が起きるかどうかは別問題です。予測の精度は研究が進む領域であり、候補選定には限界が残ります。

ネオアンチゲンを使った治療は、もう受けられますか?

多くが研究・開発段階にあり、標準治療として広く確立したものではありません。奏効率や効果を断定できる段階にはなく、有効性と安全性は治験を通して検証されています。治療を受けられるかどうかは、病状や研究の状況をふまえ、主治医や専門医が個別に判断します。

作成にはどのような課題がありますか?

時間とコスト、がんの異質性、免疫回避、予測の限界などが挙げられます。患者ごとに個別に作るため量産しにくく、負担が大きくなりやすい傾向があります。がん細胞の変異が部位や時期で変わることや、免疫の攻撃を逃れる仕組みも、研究が続く課題です。

NGSは作成のどこで使われますか?

主に、変異を同定するステップで使われます。NGSは腫瘍と正常組織のDNAやRNAを並行して読み取り、その差分から体細胞変異を洗い出します。RNA解析を組み合わせて、実際に働いている遺伝子から標的候補を絞り込むこともあります。詳しくはNGSの役割の記事をご覧ください。

監修:岡 博史(おか ひろし)(ヒロクリニック統括院長/医学博士)

資格:日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会産業医/CAPラボディレクター/東京衛生検査所 指導監督医

所属:医療法人社団福美会 理事

略歴:1996年 慶應義塾大学医学部 卒業/2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得/2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手/2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業/2009年 医療法人社団福美会 理事長/2015年 医療法人社団福美会 理事

担当分野:皮膚疾患・皮膚外科・医療情報全般の監修統括

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