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CDH1遺伝子とは

この記事の概要

CDH1遺伝子は、エカドヘリン(E-cadherin)と呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子で、細胞接着において重要な役割を果たします。エカドヘリンは、細胞が互いに結合し、組織や臓器の構造を維持するために必要なタンパク質です。CDH1遺伝子の変異は、細胞の接着機能が失われ、がん細胞が周囲の組織に浸潤したり、遠隔転移したりする原因となることがあります。

CDH1遺伝子の役割

エカドヘリンは、上皮細胞の接着を維持するために不可欠であり、細胞同士をしっかりと結びつけることで、細胞の異常な移動や増殖を防ぎます。CDH1遺伝子によってコードされるこのタンパク質には、次のような役割があります。

色んな意味で上皮細胞接着分子を表す写真

細胞接着の維持:

エカドヘリンは、細胞同士が接触する部分(細胞接着部位)で働き、上皮細胞の接着組織の構造維持に関与しています。これにより、細胞が正常に機能し、がん化を抑える役割を果たします。

がん抑制:

細胞接着が正常に機能することで、がん細胞が周囲の組織に浸潤するのを防ぎます。エカドヘリンの喪失は、がんの浸潤性や転移能力の増加に寄与し、がんの進行を促進することがあります。

シグナル伝達:

エカドヘリンは、細胞内のシグナル伝達にも関与し、細胞の増殖や分化の制御を行います。エカドヘリンが正常に機能しない場合、これらの調整が失われ、異常な細胞増殖やがん化が進行します。

CDH1遺伝子の変異とがんリスク

CDH1遺伝子の変異は、特定のがん、特にびまん性胃がん葉状乳がんとの関連が強く、遺伝性がんのリスク要因となります。

びまん性胃がん(Diffuse Gastric Cancer)

  • CDH1遺伝子変異は、びまん性胃がんの主要な遺伝的要因です。びまん性胃がんは、胃の粘膜にがん細胞が広がりやすく、通常の胃がんよりも進行が早く、予後が悪いことが多いです。
  • 遺伝性びまん性胃がん(HDGC): CDH1遺伝子の変異は、遺伝性びまん性胃がん症候群(Hereditary Diffuse Gastric Cancer, HDGC)として知られ、家族性に発症します。HDGC患者は、若年で胃がんを発症するリスクが高く、予防的な胃全摘術が推奨される場合もあります。

葉状乳がん(Lobular Breast Cancer)

  • CDH1遺伝子変異は、葉状乳がんのリスクも高めます。葉状乳がんは、乳腺の小葉から発生するがんで、通常の乳管がんとは異なる特性を持ちます。
  • CDH1の機能が失われると、乳がん細胞の接着が不十分になり、がんが周囲の組織に広がりやすくなります。
胃痛

CDH1遺伝子の診断と予防

CDH1遺伝子の変異は、遺伝子検査によって確認されます。特に、家族歴にびまん性胃がんや葉状乳がんがある場合、遺伝子検査が推奨されることがあります。

  • 遺伝子検査: 家族性びまん性胃がんや葉状乳がんのリスクが高い家系では、CDH1遺伝子変異の有無を確認するための遺伝子検査が利用されます。遺伝性のがんリスクを評価するために、CDH1が含まれる遺伝子パネル検査が行われます。
  • がん予防: CDH1変異がある場合、がんの早期発見を目指した定期的なスクリーニングや、リスク軽減のための予防的手術が検討されることがあります。特に、遺伝性びまん性胃がんのリスクがある場合、予防的な胃全摘術が推奨されることがあります。

CDH1遺伝子の治療への応用

CDH1遺伝子の変異が確認された場合、特定の治療法や管理計画が検討されます。これには、予防手術や定期的なスクリーニングが含まれることが一般的です。

  • 胃がん治療: CDH1変異を持つびまん性胃がんの患者には、胃全摘術(胃を完全に切除する手術)が推奨される場合があります。これは、がんが進行する前にリスクを軽減するためです。
  • 乳がん治療: 葉状乳がんに対しては、がんの進行度や広がりに応じて、手術や放射線治療、化学療法などが適用されます。

まとめ

CDH1遺伝子は、細胞接着とがん抑制に重要な役割を果たしており、この遺伝子に変異があると、特にびまん性胃がん葉状乳がんのリスクが大幅に増加します。CDH1の変異は、がんの発生や進行に深く関与しており、がんリスクを早期に確認し、予防的な措置を取ることが重要です。

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