HUMEDITロゴ

PGT-Mによる福山型筋ジストロフィー(FCMD)の着床前診断について



PGT-Mによる福山型筋ジストロフィー(FCMD)の着床前診断について



福山型筋ジストロフィー(Fukuyama Congenital Muscular Dystrophy, FCMD)は、日本で比較的多く見られる遺伝性の筋ジストロフィーで、筋力低下や運動発達遅延、呼吸障害などの合併症を伴います。この疾患は常染色体劣性遺伝であり、両親からそれぞれ変異遺伝子を受け継ぐことで発症します。発症リスクがあるご夫婦が将来の子どもに疾患が受け継がれないよう、体外受精と着床前診断を組み合わせたPGT-M(着床前単一遺伝子疾患検査)が選択肢の一つとなります。



PGT-M(着床前単一遺伝子疾患検査)とは

PGT-Mは、体外受精(IVF)によって得られた受精卵の遺伝子を検査し、特定の単一遺伝子疾患の有無を調べる着床前診断です。福山型筋ジストロフィーの場合、FCMD遺伝子の変異が存在するかどうかを検査し、健康な受精卵を選んで子宮に移植することで、将来の子どもが疾患を持たずに生まれる可能性を高めます。



福山型筋ジストロフィーに対するPGT-Mの流れ

  1. 体外受精(IVF)の実施
    - まず、卵巣刺激を行い複数の卵子を採取し、体外受精によって受精卵を作成します。


  2. 胚の成長と細胞採取
    - 受精後、胚が数日間培養され、5~8細胞期の胚または胚盤胞まで成長した段階で、胚の一部から少量の細胞を採取します。この段階の細胞採取は胚の発育に影響を与えないとされています。


  3. 遺伝子検査
    - 採取した細胞からFCMD遺伝子の状態を確認するための遺伝子検査を実施します。福山型筋ジストロフィーを引き起こす特定の逆位挿入変異やその他の変異の有無をチェックし、疾患リスクがない正常な胚を選別します。


  4. 胚移植
    - PGT-Mにより福山型筋ジストロフィーのリスクがないと確認された胚を子宮に移植します。その後、通常の妊娠と同様に着床から出産までの管理が行われます。


PGT-Mの利点と留意点

利点
- 疾患の発症リスク低減:PGT-Mにより、福山型筋ジストロフィーを発症するリスクが低い受精卵を選ぶことができるため、遺伝性疾患のリスクを軽減することが可能です。
- 精神的・経済的負担の軽減:発症のリスクを低減することで、家族の精神的・経済的な負担を軽減することが期待されます。



留意点
- 完全なリスク回避は保証できない:遺伝子検査の精度は非常に高いものの、検査技術には限界があり、100%の結果が得られるわけではありません。
- 倫理的・心理的な課題:PGT-Mには倫理的な問題が伴います。遺伝カウンセリングを通じて、PGT-Mの利点や課題について十分な理解を深めることが推奨されます。
- 費用と体外受精の負担:PGT-Mは通常の妊娠と比較して費用が高く、体外受精のプロセスには肉体的・精神的な負担も伴います。



まとめ

PGT-Mは、福山型筋ジストロフィーのリスクを軽減し、将来の子どもが健康に育つ可能性を高める方法として、発症リスクのあるご夫婦にとっての選択肢となり得ます。ただし、倫理的・経済的な側面についても考慮が必要であり、PGT-Mの実施を決断する際は、専門家による遺伝カウンセリングを受けることを強く推奨します。