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褐色細胞腫の遺伝子とは?傍神経節腫の遺伝性を解説

褐色細胞腫と傍神経節腫(パラガングリオーマ)は、原因となる遺伝子が数多く見つかっており、ほかの腫瘍と比べて遺伝性(生殖細胞系列変異)の割合が高いことで知られる腫瘍です。代表的な原因遺伝子には、SDHx(SDHA・SDHB・SDHC・SDHD・SDHAF2)やVHL、RET、NF1などがあります。この記事では「褐色細胞腫 遺伝子」というテーマにそって、どの遺伝子が関わるのか、SDHB変異が注目される理由、遺伝子検査や遺伝カウンセリングの流れまでを、専門用語をかみくだいて解説します。

この記事でわかること

  • 褐色細胞腫と傍神経節腫(パラガングリオーマ)の違いと共通点
  • これらの腫瘍で遺伝性(生殖細胞系列変異)の割合が高い理由
  • SDHx・VHL・RET・NF1など主な原因遺伝子の役割
  • SDHB遺伝子の変異が特に注目される背景
  • 「変異があっても必ず発症するわけではない」という考え方
  • 遺伝子検査と遺伝カウンセリング、家族への影響の考え方

褐色細胞腫・傍神経節腫とは何か

褐色細胞腫と傍神経節腫は、どちらも交感神経や副腎に関わる細胞から生まれる、まれな内分泌腫瘍です。名前は違いますが、発生する場所が異なるだけで、性質はよく似ています。まずは両者の位置づけを整理します。

褐色細胞腫と傍神経節腫(パラガングリオーマ)の違い

褐色細胞腫は、腎臓の上にある副腎の髄質から発生します。一方の傍神経節腫は、副腎の外にある「傍神経節」という神経の集まりから生まれます。発生場所が副腎の中か外か、という違いです。

両者はまとめて英語の頭文字からPPGLと呼ばれます。副腎髄質にできれば褐色細胞腫、それ以外の場所にできれば傍神経節腫。呼び名が分かれるだけで、背景にある遺伝子はかなり共通しています。

項目褐色細胞腫傍神経節腫(パラガングリオーマ)
発生場所副腎の髄質副腎の外の傍神経節(頭頸部・胸腹部など)
ホルモン産生カテコールアミンを産生することが多い頭頸部型は産生しないことが多い
主な症状動悸・頭痛・高血圧・発汗などできた場所による腫れやしこり、産生型では動悸など
遺伝との関係遺伝性の割合が高い遺伝性の割合が高い(特にSDHx関連)

なぜ「遺伝子」が注目されるのか

この腫瘍が特別なのは、生まれ持った遺伝子の変化が関わる割合が、ほかのがんより高い点です。だからこそ診療の場面では、腫瘍そのものだけでなく原因遺伝子まで調べる考え方が広がっています。

私自身、この分野を調べていて驚いたのは、関わる遺伝子の数の多さでした。ひとつの病気に十数種類もの原因遺伝子が並ぶ様子は、ほかの腫瘍ではあまり見かけません。それだけ遺伝子との結びつきが深い腫瘍だと感じます。

褐色細胞腫・傍神経節腫は遺伝性の割合が高い

褐色細胞腫と傍神経節腫は、生殖細胞系列変異(生まれ持った遺伝子の変化)が見つかる割合が、ほかの腫瘍と比べて高いことで知られます。この点が、遺伝子という切り口を欠かせないものにしています。

かつては遺伝性は全体の1割ほどと考えられていました。しかし遺伝子解析が進んだ結果、報告によっては3〜4割ほどに生まれ持った変異が見つかるとされています。数値は研究や対象によって幅があるため、ここでは「高い傾向がある」という事実にとどめます。

遺伝の伝わり方は、多くが常染色体顕性遺伝という形をとります。両親のどちらかが変異を持つと、子へ2分の1の確率で受け継がれる形式です。ただし一部の遺伝子では、父由来か母由来かで発症のしやすさが変わる特徴も知られています。

ここで押さえたいのは、遺伝子の変化があることと、実際に発症することは同じではない点です。詳しくは後半で触れますが、まずは「遺伝子との関係が深い腫瘍」という前提を共有します。この腫瘍の全体像は、国立がん研究センターの褐色細胞腫の解説も参考になります。

主な原因遺伝子一覧(SDHx・VHL・RET・NF1ほか)

褐色細胞腫・傍神経節腫の原因遺伝子は、SDHx・VHL・RET・NF1・MAX・TMEM127など複数のグループに分かれます。それぞれ体の中での働きが違い、関わる症候群も異なります。代表的なものを表で整理します。

遺伝子主な働き関連する病気・特徴
SDHBミトコンドリアのエネルギー代謝(複合体II)傍神経節腫・褐色細胞腫。悪性・転移との関連が指摘される
SDHD同上(複合体IIのサブユニット)頭頸部の傍神経節腫に多い。父由来変異で発症しやすい
SDHC / SDHA / SDHAF2複合体IIの構成・組み立て傍神経節腫・褐色細胞腫のリスクに関わる
VHL酸素感知に関わるがん抑制遺伝子フォン・ヒッペル・リンドウ病。腎細胞がん等も
RET細胞増殖を調節する受容体型チロシンキナーゼ多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)。甲状腺髄様がんも
NF1細胞増殖を抑えるがん抑制遺伝子神経線維腫症1型。カフェオレ斑などを伴う
MAX / TMEM127細胞増殖の制御に関わる褐色細胞腫・傍神経節腫の一部で報告

SDHx(SDHA・SDHB・SDHC・SDHD・SDHAF2)

SDHxは、ミトコンドリアでエネルギーを生み出すコハク酸脱水素酵素(複合体II)を作る遺伝子グループです。この酵素がうまく働かないと、細胞の中で代謝のバランスが崩れ、腫瘍が育ちやすい環境につながると考えられています。

なかでもSDHDとSDHAF2には、父から受け継いだ変異で発症しやすいという特徴が知られています。ゲノム刷り込みと呼ばれる仕組みが関わるためです。同じSDHxでも、遺伝子ごとに性格が違うと理解しておくと役立ちます。

VHL・RET・NF1・MAX・TMEM127

VHLはフォン・ヒッペル・リンドウ病の原因で、褐色細胞腫のほか腎細胞がんや血管腫にも関わります。腎がんとの結びつきは、腎がん関連遺伝子の解説もあわせて読むと理解が深まります。

RETは多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の原因で、甲状腺髄様がんや褐色細胞腫を伴います。甲状腺との関係は甲状腺がんの解説が参考になります。NF1は神経線維腫症1型、MAXやTMEM127も一部の症例で原因として報告されています。

これらの遺伝子は染色体上に配置され、親から子へ受け継がれます。遺伝子と染色体の基本的な関係はヒト染色体の解説で確認できます。内分泌の病気全般は日本内分泌学会の情報も手がかりになります。

SDHB遺伝子の変異が特に注目される理由

SDHB遺伝子の変異は、悪性や転移との関連が指摘されており、原因遺伝子のなかでも特に注目されています。同じ傍神経節腫でも、背景にある遺伝子によって経過の見通しが変わりうるためです。

SDHB変異を持つ場合、ほかの遺伝子と比べて転移をきたす腫瘍と結びつきやすいと報告されています。だからこそ、SDHB変異が見つかったときは、専門医のもとで経過を丁寧にみる考え方が広がっています。SDHB 遺伝子という言葉が検索されるのも、この背景があるからです。

ただし、SDHB変異があれば必ず悪性になるわけではありません。あくまで相対的に関連が高いという話です。個々の見通しは、腫瘍の場所や大きさ、検査結果を合わせて専門医が判断します。過度に不安を先取りしないことも、同じくらい大切です。

「遺伝子変異がある=必ず発症」ではない

原因遺伝子に変異があっても、その人が必ず発症するわけではありません。ここは誤解されやすいので、しっかり押さえてください。遺伝子の変化は、発症のしやすさを高める要因のひとつにすぎません。

同じ変異を持っていても、発症する人としない人がいます。この「発症のしやすさの割合」を浸透率と呼び、遺伝子ごとに大きく異なります。SDHDやSDHBなどでも、キャリア全員が発症するわけではありません。

だからこそ、変異が見つかったこと自体を病気の宣告と受け取る必要はありません。むしろ、発症前から体の状態を意識できる材料として使えます。この前向きな捉え方が、遺伝子情報との付き合い方の基本になります。

遺伝子検査と遺伝カウンセリングの流れ

遺伝子検査は、遺伝カウンセリングと組み合わせて、専門医のもとで個別に進めるのが基本です。検査だけを単独で受けるのではなく、結果の意味を一緒に考える過程が欠かせません。

大まかな流れは次のとおりです。まず問診や家族歴の確認から始まり、必要に応じて遺伝子検査を検討します。結果が出たあとは、その意味と今後の選択肢を専門家と話し合います。この一連の流れが、ひとつのまとまり。

  • 問診・家族歴の確認:発症年齢や親族の病歴を整理します
  • 遺伝子検査の検討:どの遺伝子を調べるかを専門医と相談します
  • 遺伝カウンセリング:結果の意味や家族への影響を一緒に考えます
  • サーベイランスの相談:画像・生化学検査の進め方を個別に決めます

サーベイランスとは、発症の兆しを早めにつかむための定期的な確認。血液や尿の生化学検査、MRIなどの画像検査が用いられます。ただし、何をどの間隔で行うかは、遺伝子の種類や年齢を踏まえて専門医が個別に判断します。一律の正解はありません。

家族への影響とサーベイランスの考え方

生殖細胞系列の変異が見つかった場合、その情報は本人だけでなく血縁者にも関わります。常染色体顕性遺伝という形式のため、親や子、きょうだいが同じ変異を持つ可能性があるからです。

とはいえ、家族に伝えるかどうか、いつ検査を受けるかは、それぞれの事情に沿って決める話です。遺伝カウンセリングでは、こうした家族内のコミュニケーションも一緒に考えます。ひとりで抱え込まない仕組みが用意されています。

指定難病としての制度や相談先については、難病情報センターの情報もあわせて確認すると安心です。公的な情報源を押さえておくと、必要なときに動きやすくなります。

HUMEDITのがん関連遺伝子検査でできること

HUMEDITは、がんに関連する遺伝子を調べるサービスを通じて、体の状態を知る手がかりを提供しています。褐色細胞腫や傍神経節腫のように、遺伝子との関係が深い分野では、こうした情報が選択肢を考える材料になります。

遺伝子検査は、病気を治す手段そのものではありません。あくまで、専門医の診療や遺伝カウンセリングと組み合わせて活かすものです。私たちが大切にしているのは、結果を正しく理解し、次の一歩を落ち着いて選べる状態をつくることにあります。

取材を通じて感じたのは、遺伝子の情報は「怖いもの」ではなく「備えるための材料」だということでした。事業の考え方はHUMEDITの取り組みでも紹介しています。気になる方は、まず気軽に相談してみてください。

よくある質問(FAQ)

ここでは、褐色細胞腫・傍神経節腫の遺伝子について、よく寄せられる疑問に答えます。気になる点から読んでください。

Q1. 褐色細胞腫は必ず遺伝するのですか?

いいえ、すべてが遺伝性ではありません。ただし、ほかの腫瘍と比べて生まれ持った変異が見つかる割合は高い傾向があります。遺伝性かどうかは、家族歴や遺伝子検査を踏まえて専門医が判断します。

Q2. SDHB遺伝子の変異が見つかると危険なのですか?

SDHB変異は悪性や転移との関連が指摘されていますが、変異があれば必ず悪性になるわけではありません。相対的に関連が高いという話です。見つかった場合は、専門医のもとで経過を丁寧にみていく形になります。

Q3. 傍神経節腫とパラガングリオーマは同じものですか?

はい、傍神経節腫はパラガングリオーマの日本語名で、同じ腫瘍を指します。副腎の外の傍神経節から生まれる腫瘍で、褐色細胞腫とあわせてPPGLと呼ばれます。背景にある遺伝子も共通する部分が多くあります。

Q4. 遺伝子変異があると、家族も検査を受けるべきですか?

血縁者が同じ変異を持つことがあるため、検査を検討する意味はあります。ただし受けるかどうかは本人と家族の意思で決めます。まずは遺伝カウンセリングで、伝え方や時期を含めて相談してください。

Q5. 遺伝子検査を受ければ治療につながりますか?

遺伝子検査は治療そのものではなく、体の状態を知り、経過観察の方針を考えるための情報です。結果は専門医の診療や遺伝カウンセリングと組み合わせて活かします。検査だけで治療方針が決まるわけではありません。

Q6. サーベイランスはどのくらいの頻度で行いますか?

一律の頻度は決まっていません。原因遺伝子の種類や年齢、これまでの検査結果をもとに、専門医が個別に判断します。生化学検査や画像検査を、無理のない間隔で組み合わせる進め方が一般的です。

監修:岡 博史(おか ひろし)(ヒロクリニック統括院長/医学博士)

資格:日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会産業医/CAPラボディレクター/東京衛生検査所 指導監督医

所属:医療法人社団福美会 理事

略歴:1996年 慶應義塾大学医学部 卒業/2004年 慶應義塾大学 医学博士号 取得/2005年 慶應義塾大学 皮膚科学教室 助手/2008年 ヒロ皮フ形成クリニック 開業/2009年 医療法人社団福美会 理事長/2015年 医療法人社団福美会 理事

担当分野:皮膚疾患・皮膚外科・医療情報全般の監修統括

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